デザイナーアピール
デザイナー名:はるを@浅川河畔スタジオ/月夜埜綺譚製作委員会
形態:同人誌(156p/オフ)
付属品:キャラクターシート シナリオ リプレイ 他
価格:即売会1500円 通販は検討中です〜
入手方法:いまのところ即売会のみ
ウェブ:http://rose.zero.ad.jp/~zah63840/tsukuyono/
連絡先:bummler*at*bird.to
紹介文著者:はるを
ジャンル:街系(現代日本の郊外を舞台とした伝奇/ハードボイルド/ファンタジー)
現代日本の郊外に暮らす普通の人々の生活をシミュレートしながら、なぜか普通人であるはずのプレイヤーキャラクターたちに襲い掛かるさまざまな事 件を解決していく、というちょっと変わった趣向のTRPGです。
普通のTRPGとは異なり、まず生活ありきであり、キャラクターは社会的存在として描かれます。会社や学校にはきちんと通わなければなりません し、家にいる時間だって自由とは限りません。生活をおろそかにすることは“社会的危機”を引き起こし、ひいてはキャラクターの生命が危うくなるようになっ ています。…そこで徹夜したり、先生や上司に言い訳したり、奥さんや恋人にプレゼントを贈ってごまかしたりしながら、事件を解決する時間を作っていくこと となります。それらが“カレンダー”という概念を用いた進行管理系としてシステム化されているのが特徴といえるでしょう。
また、キャラクターを構成している能力を一時的に削ることで、プレイヤーは成功確率と成功段階を左右することができるようになっています。これら の資源を管理していくことも主なゲームとなります。
月夜埜綺譚の舞台「月夜埜市」は、東京の山手線エリアから電車で二時間程度かかる場所にある、バブル崩壊後の郊外の街です。人口はおよそ24万 人。古くからの権力構造ががらがらと崩れる中、無秩序な開発と、打ち捨てられる廃墟とがせめぎあっています。そんな、どこにでもあるような街です。
…多くの人々はそんな状況に不満や不安を感じながらも、きわめて普通に暮らしています。世界の平和や経済問題も大事ですが、たいていの場合、今日 の夕食とか来週の小テスト、取引先との歓談や、就職探しなんかのほうが大事でしょう。明日世界が滅ぶかもしれないことを本気で心配している人はいないし、 そもそもそんなことを言っていたら生活はままなりません。
しかし、この街の状況はお世辞にもよいとはいえません。貧富の差は広がり、治安も悪くなる一方。気持ちの悪い都市伝説が流れ、全国的に有名になっ てしまうような酸鼻な事件が起きたりしています。さまざまな衝突が、爆発寸前の状態で秘められています。
そのうえ、この世界には、われわれが暮らす21世紀初頭の世界とは異なりある種の超能力が実在します。ただしそれは手から火を放ったりというよう な物理現象を左右する力ではなく、他人や自分にむりやり力ある夢を見せる能力、とでもいうべきものです。夢とはいえそれは人の体や心を実際に傷つけたり変 化させたりする力を持っており、ときに大きな危機をも巻き起こします。その力をめぐり謎の組織が暗躍していたりして、はた迷惑なことに月夜埜市はなぜかそ のような勢力の衝突点ともなっているのです。……ちなみに超能力の存在は巧妙に隠匿されており、ゲーム世界においても(われわれの世界と同じように)超能 力は存在しないというのが一般の認識で、実際の超能力は恐怖と忌避の目によって見られることとなります。
職業(学生なども含む)と家庭(もちろん独居もできる)を持った生活者です。選ばれた戦士ではないし、自由な立場の冒険者でもありません。共通の 特徴として、世間で起こるさまざまな事件に好奇心を抱いてしまう傾向がありますが、自分の今の生活を基本的に愛しています。……なぜか武装してたり、隠れ 超能力者だったりすることもできます。ただ戦闘力皆無のプレイヤーキャラクターがわりと普通に活躍します。
あらかじめさまざまな立場の人が事件へと立ち向かっていくことを前提としており、各キャラクターの数値上の能力、人脈、立場、ライフスタイルなど で複雑に役割分担がなされるようになっています。
ちなみにキャラクターメイキングが少しばかり煩雑であるのと、このシステムにおける強い弱いが慣れない方にはわかりにくいこともあって、15種類 のアーキタイプをはじめから用意してあります。これは今後も順次追加していく予定です。
月夜埜綺譚はターン制をとっています。まずマスターが状況説明の後にターン(曜日と時間帯)を宣言、各プレイヤーが1回ずつ行動する、ということ を繰り返してゲームが進んでいきます。1日あたり都合3回の行動機会が与えられていますが、これが一筋縄には行きません。
プレイヤーキャラクターはそれぞれ“カレンダー”を持っています。“カレンダー”は月曜日から日曜日までの各曜日に、夜、昼、夕の3つの時間帯 (行動機会)が示され、それぞれの欄に「ー」「×(w)」「△(ニュータウン)」とかの記号が書き込まれています。これらは就寝中とか、仕事中とか、用事 が入るかもしれない、などを意味しています。
| \ | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
| 夜 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
| 昼 | ×(w) | ×(w) | ×(w) | ×(w) | ×(w) | △(w) | ×(NT) |
| 夕 | △(w) | ○ | ×(F) | ×(恋人) | ×(土建) | ×(F) | ×(F) |
上の図は月夜埜綺譚の一般的なキャラクターのカレンダーを示したものです。ごらんのとおり丸々余暇であることを示す「○」マークは実に、一週間の うちわずかに火曜日の夕ターンのみ。もちろん火曜日に事件が起こってくれるとは限りませんし、ほかのキャラクターと「○」の時間帯があうことも稀です。そ れなのに事件はそんなことにおかまいなく彼女/彼に襲い掛かってくるのでした。……こうして、仕事中に内職したり、恋人に謝ったり、睡眠時間を削ったりし ながら、事件に立ち向かっていく、という実に生活に密着したプレイ風景がシステム的に実現されているわけです。
行為判定は、能力値とスキルなどの合計に3D6を足して、合計が目標値を越えていれば成功、という上方ロールです。ただし成功はただ成功であり、 クリティカルヒットのような効果的成功には、自ら宣言しなければ挑戦できないようになっています。
これに加えキャラクターが持つスキルなどのレベルを一時的に消費することによって達成値をかさあげする“ベット”と、目標値をつりあげることに よって成功段階を上げる“レイズ”というオプションが用意されています。月夜埜綺譚ではレベルの差があるとほとんど勝負にならないため、実際のゲームで は、ベットとレイズをどのような局面で使っていくかという資源管理がゲームの主眼となっています。これは、普通の行為から、カレンダーとの付き合い、戦闘 などに共通したルールです。
月夜埜綺譚のもう一つの売りは、その充実した(?)世界設定とマスター向けデータです。街マニアを自ら名乗るデザイナーが、徹底した実歩調査と資 料調査を重ね、さらにゲーム向けの世界とするための調整を加えて作り上げられています。詳細な全体地図と、地域ごとの絵地図、商店や名所、歴史、そこに住む人々など。また、月夜埜市にはあらかじめさ まざまなコンフリクトが用意されています。これらは、デザイナー自身がマスターするときに楽なようにを心がけたもので実用的なはずです。
……もちろん設定をすべて把握する必要なんてまったくありません。プレイを通じて、街のいろんな側面を知っていく→キャラクターの知り合いが増え ていく、というような経過をたどることを意図して作られています。ゲームするだけならキャラクター周辺のみ、深めたいならいくらでも奥深く、がモットーで す。
ものの本によるとUFOや幽霊を見る人の多くが郊外で見るといいます。世間を騒がせる事件が、多く郊外を舞台とし始めたのはいつ頃からのことで しょうか。バブル崩壊を経た現在、ライトノベルやエンタテイメント、SF、純文学を問わず、郊外は多くの物語に題材を与えています。そこに扱われる郊外は しばしば生活の倦怠や、人間性の醜さの発露、日常のすぐそばにある恐怖、ないしは破れた夢を、表す象徴的空間です。けれど「郊外もの」に驚くほどにかっこ いい物語が多いのも事実です。描かれたその場所はまた、地に足をつけて生きていこうとする人々の、絶望へとへっぴり腰で立ち向かうちっぽけな人々の、“日 常”という戦いの舞台でもあるのでした。……「郊外もの」を一つのジャンルにくくるということは無理があることはわかっていますが、デザイナーは「郊外も の」の物語が大好き、です。
さてTRPGに目を向けてみると、「現代もの」と称するシステムは、多数派ではないけれど、あります。日常と非日常の軋轢のようなものを扱ったも のもありました。けれどそこで描かれる日常は、たいてい非日常をそれっぽく演出するためのフレーバーに過ぎませんでした。いろいろ探してみたのだけれど、 日常という豊潤な、それでいてどこかほろ苦いこの題材を、きちんとゲームとして活かせるシステムでTRPGをしたいのに、これが不思議と見つからない。 (設定がそういうのならいくつかありましたけど。)ないなら作ろう、ということで月夜埜綺譚ができました。
ちなみにこのシステム、実は日常を描くだけに、かなりヒロイック指向でもあったりします。あまり万人向けの趣向とはいえませんが、上に書いてある 内容にどこか燃えるものを感じられるような方は、お手にとってみてはいかがでしょうか。
この記事はScoops RPGを支える有志の手によって書かれたもので、あらゆる著作権は著者に属します。転載などの連絡は著者宛てにしてください。紹介されたゲームについての 全権利はデザイナーあるいはデザイン・グループに属します。ゲームに対する質問はデザイナーにお願いいたします。