|
Idea Factory |
|---|
(2000年10月27日)
by カール・クレーベンス(Carl Cravens)
訳:トモス(tomosakinas*at*hotmail.com)
お帰りなさい! 僕はこのエッセイを書いていて楽しいけど、書いてあることが人の役に立ってるのかどうかはわからない。もし僕が書いたテクニックを使ってポジティブな経験をした人がいたらフォーラムの方で他のひととそれをシェアして欲しいな。僕もアイディアがどういう風に使われたのかを聞きたい。
今月はこのアイディア・ファクトリーの最初のエッセーで扱ったテーマを再訪する。もちろんひとひねり加えてね。アートカードを用意して欲しいんだ。アートカードを知らないって? あきらめるないで! アートカードはベースボールカードみたいなものだ、ファンタジーとかSFのイラストが描いてあるところが違うだけ。いろいろなアーティストが描いていて、少し前のセットだったらかなり安く入手することも可能だ。(このエッセイの最後にどうやって探すかについても話すよ。)文章が書いてないマジック・ザ・ギャザリングのカードみたいなものだ・・・このカードを使っても全然平気だよ。僕はアートカードの方が好きだ。絵がカード全体をカバーしているせいで大きめだから。(ちなみにマジック・ザ・ギャザリングの全コレクションは数年前に売ってしまって家を買う時の頭金に使っちゃったんだよね。)
じゃあアートカードを、あるいはなければMTG用のカードを、ひとしきり手に入れて欲しい。たくさんあるほどいい。カードに何が描いてあるかは問題じゃない。ファンタジー、SF、ヴァチカンの古典絵画、何でも役に立つ。(いや、「バチカン市国図書館所蔵 美術の至宝」っていうセットがホントにあるんだよ。)でもバフィー・ザ・バンパイア・スレイヤーだとかXメンのみたいなカードは避けて欲しい。ああいうのは象徴的な表現に乏しくてあらかじめ定まった意味を伝えるものになってるから。アートカードは普通、本の表紙絵で、象徴表現を盛んにやるアーティストたちのものだ。
著作権の関係上、僕が使ってるカードを例として見せることはできないから、カードの説明をしなくちゃならない。インパクトが弱くなっちゃうけれども、アイディアは伝わると思う。(ちなみに僕はいい例を出すのにズルはしないんだ。ブレインストーミングで格闘しなきゃならないところについては自分でもやってみる。でも複雑な絵を想像しやすいように説明するのが余りにも大変だから文章で説明しやすいような簡単な絵を選んでそれを使わざるをえなかった。)
今回のテクニックはキャラクターに肉付けするのに役立つものだから、最初のコラムで考えた例のナイトを例に使って始めてみよう。彼は信仰の篤い人物で、無鉄砲で、しゃれ者の彼のロードの息子と対立関係にある。もう少し性格を描き出して、背景をつけ加えたいところだ。(ところで、彼の名前はコンラッドだ。)
じゃあ、カードを1、2枚ひいて始めてみよう。(僕は拡張セットのエヴァーウェイ・ヴィジョン・カードを使っているよ、同じのを持っててフォローしたい人のために書いておくけど。カード番号もその都度挙げていくことにする。)
ときどき、描かれている絵の一部をそのままアイディアにすることができる場合があると思う。スピアを持った原始人が毛むくじゃらのマンモスの上に座って雪に覆われた坂を下ってる絵(45番)なんかはバーバリアンのキャラをつくるのにいいインスピレーションになるかも知れない。あるいは氷河期の設定をつくってそこを舞台にプレイするとか。でもほとんどの場合、象徴的な表現を探さなきゃいけないってことになると思う。そうでもしなけりゃ宇宙船どうしの戦いの絵から中世の騎士についてのインスピレーションを得ることなんてできっこないからね。
このシリーズの一番最初のコラムで書いたように、象徴表現っていうのは愛がバラの絵に描かれてるのを感じとることだ。そして今、巨大な人型で牙と赤い眼を持った獣が大蛇に巻かれて悪戦苦闘している絵がカードに描かれているのをひいた(48番)。ここにあるどの要素も僕らが例に使ってる騎士コンラッドにあてはまるようには見えない。彼は獣人じゃないし大蛇でもない。でもちょっと待った。何が絵に描かれているのかを考えてみよう。この獣人、蛇と格闘してる。蛇はしばしば悪とか誘惑を象徴している。獣人はコンラッドの表現だろうか? コンラッドはケモノじゃない。彼はかなり紳士だ。でもどんな男もケモノっぽい部分を持っているものだ。そして彼の内なるケモノはたぶん誘惑と闘っているんだ。コンラッドが闘う誘惑ってどういうものが考えられるだろうか? このカードに関しては特にそれ以外には何もヒントになりそうなものが見あたらない。じゃあもう一枚ひいてみよう。
次にとったこのカードは若い黒髪の女性の横顔の絵(80番)。霧の中に立っていて彼女以外には何も見えない。彼女の黒髪も霧の中にかすんでいる。彼女の瞳は閉じられていて、孤独さを漂わせている。悲しそうですらある。髪には白いものが絡んでいる・・・これは僕には絵の具のシミに見えるけど。
ということはこれがコンラッドの苦闘なんだな −ある女性と、その人への彼の思い。彼のロードと国のために捧げられた彼の人生にはその思いが実を結ぶ場所はない。
この女性は誰だろう? これには絵には描かれていない、直観的にひらめいた答を出すことにしよう −この女性は男爵夫人、彼の使えるロードの妻だ。そして彼女の髪に混じった白いものは? これは雲を見るようなものなんだけど、もしあるところから見たら、それが男の顔に見えてくる。これは最初は彼女の髪の中にあると思ったけど、それは彼女の心の内を描いてあるんだ・・・。そして彼女の心の内にあるのはコンラッドだ。コンラッドは男爵に使えることで彼女の近くにいるはめになっている。誘惑から逃れる手段はなく、彼女は彼にひかれていて、思い焦がれている。
この彼女の周りの霧は何だろう? これは何を隠してるんだろう? 面白い疑問だけど、さしあたり手持ちのカードからは手がかりがつかめない。時にはがんばってあれこれの解釈の可能性を模索する必要があるけど、すべてのものに意味を見つけようとして無理をしすぎないようにね。もしひとつの絵からひとついいアイディアを見つけたら、ブレインストーミングのセッションはひとまず成功。もし2つ3つのアイディアが出てきたらラッキーだと思って全部をひとつのまとまった物語に仕立てあげようなんて無理をしないことだ。
それから、一度絵を使ったらそれをもう一度カードの山に戻しておくのがいいんだよ。今日はバラは愛かも知れない。明日は血かも知れない。出てきた疑問に全部は答えられなかった。絵はもう一度使って別の解釈や使い道を探したらいい。新しい視点で見る度に絵の違った解釈が出てくる。文脈が違えば絵は無限に再利用がきくんだ。
ここでちょっと流れを変えて、コンラッドをきみのゲームに導入することを考えてみよう。ここにひとりのキャラがいて、彼の燃えあがる情熱は彼を苦しめている。けれども彼のロードに対する忠誠と愛はその情熱を実行に移すことを妨げる。もしコンラッドに行動を起こさせることができるなら、これはロールプレイにはかなり強力な設定だ。(行動しないことじゃなくて行動することがドラマをつくるっていう原則を思いだそう)必要なのは、彼の情熱と忠誠の間のバランスを崩して彼に行動を起こさせるような何かだ。じゃあまたカードをひいてみようか?
これはまたどうにも醜い、オークみたいな奴だ(63番)。大きくて、鎧と武器を身につけている。いいグラディエーターになるだろう。洞窟の中に頭蓋骨や骨に囲まれて座っているけど、これは明らかに人間の骨だ。彼らのような豚鼻人種の骨じゃなくてね。で、この絵はコンラッドをいかに情熱の実行へ駆り立てるかについてのアイディアを示すもののはずだったっけ? 僕が思いついたのはかなり簡単な解答だ。この獣は男爵夫人の誘拐を連想させるしそれはコンラッドを救出へと向かわせるだろう。男爵のお供として、かも知れないしそうじゃないかも知れない。ともあれ彼は彼女のために行動を起こし、彼女に物理的に近づきさえする。きっと何か悲惨な体験を共有することになり、それは彼らを感情的にも近づけるだろう。彼女はすでに彼に夢中だから、2人だけで文明世界へ帰る旅路を過ごすってことになるならちょっとつらいことになるだろう。
この獣が誘拐をしなきゃいけないってわけじゃない、もちろん・・・単に人さらいの象徴なんだ。想像力を刺激して誘拐のことを考えさせる。それを僕らはゲームに結びつける。獣を見てもっと一般的な人さらいのことを考え、ゲーム世界を見て男爵夫人を誘拐することで徳をしそうな適当な人さらいを見つけるんだ。
さてここにちょっとした問題がある。誘拐シナリオは簡単な答えだって僕は言った。これはちょっと型にはまっててありふれてる。きちんと扱えばすごく使える型ではあるんだけれど。とりあえず練習のために、誘拐はどうもうまく導入できない、って考えてみよう。絵をもうすこしつぶさに見て何か他に使えそうな象徴表現がないかどうか見てみよう。
獣はちょっとしたいい鎧を身にまとっている。どこで手にいれたんだろう? 誰かをあやめて盗んだものとしちゃ大きすぎだ。ネックレスは尖った歯とメダリオンの部分に何かのシンボルがある。シンボルは何を意味しているんだろう?どういう歯なんだろうか? ネックレスは誰がつくったんだろう? 傷だらけの耳につけたイヤリングは何か意味があるんだろうか? カードを裏返してみて。タイトルは?”猪の王”ふむ。彼は王様なんだな。彼は僕らの王様の象徴だろうか?それともどこか別の王様の象徴? とりあえず彼は僕らの王様の象徴だっていうことにしてみよう。彼は食欲旺盛な男だ。彼は美しいものが好きだ。そして男爵夫人のことも・・・。この国王に男爵夫人の後を追い回させることでコンラッドの人生にもう少し揺さぶりをかけるっていうのはどうだろう? コンラッドのみたいに胸が焦がれるような恋じゃない、彼が抱いてはいけないような、性腺直結の美女への劣情だ。でも彼は国王で、聞くところによれば彼は邪魔者に対しては手短にしか相手をしないらしい。で、彼は男爵を何かのミッションに送り出すか、もし男爵が僕らのゲームから消えてもいいようなら殺害されるようにする。そして男爵夫人をひとり危なげな状態にする。コンラッド以外には彼女の名誉を守る人はいない。だから彼は男爵夫人と近づくことになる。もう彼らのためにあれこれの問題を考えてやったんだから、そこから先どうなるかはキャラクターたち次第かな。
僕が伝えようとしているこのテクニックをもう少しまとめさせて欲しい。ランダムな絵をつかって、想像力を刺激するようなテーマやシンボルを探そうとしているわけだ。絵を見たままに受け取る場合もあるけど、だいたいは「この絵のバラは何を意味してるんだろう?」って考えることになる。愛?悲しみ?血? バラを持っている人は誰か、あるいは何かを思い起こさせるだろうか? 絵の要素の中にこの作業を通じて仕上げようとしている創作(シナリオであれキャラであれ)に結び付けられそうな象徴表現を探すんだ。浮かんできた疑問の全部に答えたわけじゃないっていうことも覚えておいて欲しい。想像力が刺激されるような答が見つかるまではあれこれ疑問を思い浮かべるんだ、でもその全部に答えようなんて思わなくていい。
カードをどこで手にいれるかについて触れる前に最後に言っておきたいことがもうひとつ。絵を見たままに受け取って使うことをためらうことはない。もしあるキャラか場所か状況そのまんまって感じのカードが見つかったら、使えばいい。僕はコンラッドが儀礼用の装束に身を包んで「銀の杯」騎士団の序列の中にいるカードを見た。(で銀の杯騎士団全体が絵の中のある騎士によって戴かれた杯から生まれてきていたんだ。)物事がそのまま描かれている絵があると自分の中にあるイメージに安定性が出てくる。
で、このカードはどこで手にはいるだろか? 普通のアートカードだったら漫画やカードを売ってる地元の店に行ってアートカードがあるか聞いたらいいと思う。在庫整理用のセールをしてるコーナーとか陳列ケースの特別コーナーとかがあるかどうかもチェックするといい。たくさん買うこと。楽しめるような絵のやつを買うこと。フラゼッタのスタイルが好きじゃないなら彼の絵は避けた方がいい。(彼の絵はお色気ばっかりで象徴表現に乏しいしね。)でもあんまり選びすぎないことも大事だ。カードの一部が気に入らなくても実は象徴表現としては使えるかも知れない。
ウィザード・オブ・ザ・コーストから出ているエヴェアーウェイRPGは、(先にちょっとほのめかしたように)かなりいけるカードがある。ウィザード社はコレクション用カードとRPGを融合させて、タロットみたいなカードのセット(「フォーチュン・デッキ」)と、僕が使ったみたいに使う用のアートカード(ヴィジョンカード)のあるゲームをつくろうとしていたんだ。エヴァーウェイは失敗だったって彼らが気づく前にアートカードの拡張セットも出た。eBayでなら定価40ドルのメイン・ボックスは10ドル以下で買えるし、拡張アートカードセットは数ドルで買える。お買い得だ・・・来月はこの「フォーチュン・デッキ」を創作にどう活用するかについても話すよ。エヴァーウェイを一度もプレイしたことがない人でも創作の道具としてでも買う価値はあるよ。
訳註:
なお、本稿中で言及されているエヴァーウェイは、その後ゲームズ・アンド・ギズモズ社(Games & Gizmos, Inc.、ルビコン・ゲームズとも)を経て、2001年2月にガスライト・プレス社に版権が移り、再版が予定されているほか、同社による第2版が制作中と報じられている。
同社のホームページはhttp://www.gaslightpress.com にある。