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アイデアの宝庫

あるフリーランス ゲームデザイナーの生活と人生
(Life and Time of a Freelance Game Designer)

マイク・マールズ
(Mike Mearls, mearls*at*rpg.net

訳文:トモス
tomosakinas*at*hotmail.com

多くのゲーマーは、プロとしてゲーム会社に文章を書くっていうことがどういうことなのかよく知らないと思う。ぼくの場合は自分がフリーランスライター組に加わる以前には物事がどんな風になってるのか全く知らなかった。ぼんやりとながら、いいアイディアを持ってることと基本的な文法をマスターしていることが必要だろうとは思っていた。それ以上のこととなると、はっきりわからなかったんだ。一番有名なライター達は、巷にいる90%以上の給料取りのライター達とは全然違う人生を送る。どこかで読んだけれど、フリーランスライターの収入は中央値が5000ドルかそこらだ。

1年間でね。

ちょっと考えてみて欲しい。何百万というお金を稼ぐ著者達が一方にいる。もう一方には、『リーダーズ・ダイジェスト』に投稿したジョークで50ドルをもらう人がいる。ほとんどの人はその中間にいて、収入の一部をものを書くことで手にし、でもそれだけでは十分やって行けない状況にある。もちろんもの書きはいつだって金持ちと結婚することができる(現にぼくは可愛い女の子の医者の卵の友達がたくさんいる、メディカル・スクールに通ってる友達がいる)でもだいたいの場合、平均的なライターは、家賃を払ったりするために文章書き以外に何かをする。

じゃあものを書くことは人の人生をどんな風に変えるのだろうか? フリーランスとしてゲーム産業にいるというのはどういう感じなんだろうか?

まあ聞いてくれ。

ここニューヨークのマンハッタンでは今、金曜日の夜6時47分。ぼくのような典型的なニューヨーカー、独身で、20代の大学出はちょっと小洒落たレストランか何かで食事をとってるだろう。実際ぼくは今ぼくがこうして文章を打っている間にもそんなことをしているグループをひとつ知ってる −ぼくの友人達だ。わかるだろう、夕食を一緒に食べに行く代わりにぼくは2、3時間ほど職場に残って超自然の怪物について書くことを選んだんだ。

ぼくはいわゆるドット・コム系の人間じゃない。昼間はおとなしい技術者。夜になると−

フリーランス・ライター マイク・マールス、仕事請け負います!

月曜日に締切があるんだ。ひとつ聞いて欲しいんだけど、なしのつぶてというのが締切り前のぼくの人づきあいに関してはまさに完ぺきな描写だ。もちろん、ちょっと頭を使っていれば金曜の夜に書かなくちゃいけないような羽目に陥るまで仕事を先延ばしにしたりはしなかっただろう。

その通りだろうと思う?

一番驚くことのひとつは、そしてこれはぼくが全然知らなかったことで今は痛いほど身にしみてわかることなんだけれど、ゲーム業界のでたらめな締切のスケジュールだ。しっかり確立されたゲームシリーズを扱っていて細かく決められた発売スケジュールを持っている会社は、フリーランス・ライターへの依頼を最初の原稿の締切の9ヶ月から12ヶ月前に出してくる。理論的には、ぼくはこれを調査と執筆の期間に分けて、執筆完了と初稿締切の間にかなりの余裕を持たせておくことができるはずだ。

悪いけど、自分で書いた上の文章を読み直して、ちょっと話をして大笑いしたよ。

わかるかな、ひとつのゲーム・シリーズについてだけ仕事をするライターはほんのごくわずかなんだ。おおよその場合、特にライターが仕事を集めようと一所懸命働いてる場合、いくつもの締切が年間を通じて散らばってるものなんだ。それに加えて、発売の1年前から計画するという贅沢は全部の会社がもてるわけじゃない。

ここにぼくが最近やっているあるプロジェクトのタイムテーブルの例がある。

11月4日: 電子メールでプロジェクトの提案。熱烈な反応をもらい、夜にグループ電話で詳細を詰める。
11月6日: そのプロジェクトに参加する他のライターへのガイドラインをつくる。

11月10日: プロジェクトの企画書の最初の部分の原稿7000語を提出。

11月20日: 校正を受け取り、プロジェクトの2つめの部分の大枠を決め始める。

12月10日: 原稿を2つとももう一度校正してもらうために提出。

1月初旬: 最終稿締切。

この本の完成した原稿にはおよそ1万語分ほどぼくの文章が含まれるはずだけれど、それはすべてプロジェクトが立ち上がってから1ヶ月以内に書かれたものだ。ぼくは運がいい方だ。ほかのフリーランスの人たちの時間は2週間ほど少ない。ものすごい仕事量だと思うかも知れないし、実際その通りなんだけれど、これは非常に評判のいい、いつも質のいいものを出す会社だ。少なくともぼくは彼らと仕事をすることをすごく名誉に思っている。主な理由はぼくが彼らとやる仕事について強い決定権を持つことになるから。他方、大きな会社はプロジェクトの結果として何が欲しいのかについて非常にはっきりした認識を持っている傾向にある。するとライター側はそれほどの決定権を持たない。その代わりもう少し楽なスケジュールを与えられる。細かさの上ではいろいろな、あれこれの指示に従って、ゲーム・シリーズの開発担当のビジョンに合った原稿を用意することは、創造的な作業の量からくる重圧を減らしてプロジェクトの興味深い部分に集中することを可能にする。そういう条件の下でものを書くことは別に決められたア
ウトラインに沿ってただ原稿用紙を埋めていく内容のない退屈な人間にされてしまうということではない。けれどすごくいいアイディアを持っていて、それがシリーズの他の作品とうまくフィットしないと開発担当の人が考えたら没にされてしまう可能性がある。

ぼくの控えめな意見では、プロのゲームデザイナーをプロたらしめているのはそこだ。注文に応じて書く能力、しゃがみこんでとにかくそのゲームなりサプリメントなりを書くブルドックみたいなしぶとさ。それがどんなライターにも必要な、決定的に重要な性格だ。ぼくが最初に書き始めた時は、業界にどうやって入り込むのかあれこれアドバイスを探した。既に出版している、ライターの人たちと友達になる必要があっただろうか? 業界の内情を知ってるエージェントが必要だっただろうか?

確かにどちらも助けにはなる。ちょうどCDプレイヤーとエアコンが車で通勤するのを簡単に、楽しくするように。でもキャリアを前進させる小さなエンジンは、自分自身なんだ。

インタビューにインタビューを重ね、何度も何度も出てきたアドバイスはこれだ:書け。

毎日。

日。

書きたい時だけじゃない。ムードに刺激された時だけじゃない。もしもの書きをやりたいなら、書くんだ。本当にそれだけの、簡単なことだ。ミューズは物思いに耽っている夢見がちなファミコンゲーマーよりもキーボードを叩きまくっているがむしゃらな自暴自棄のマニアの方にずっと親切だ。もし今度本を書くことを夢見る時にはそのことを思い出して欲しい。もし一日に1000語書けば、1月後には64ページのサプリメントが書けている。4ヶ月後には小説が書けている。いい小説じゃないかもしれないし、出版できるようなサプリメントじゃないかも知れない。でもそれを書いている過程で、執筆に必要な自己規律の経験をたくさん積むはずだ。そしてぼくみたいな人なら、無理をしてでもそのトピックについて目標の文章量をこなすために考えて肉付けしていく内に、最初に始めたときよりもずっといいアイディアが出てくることになる。


今は土曜日の午後。ぼくはまだ月曜日締切のプロジェクトと格闘しているけど、少なくとも昨日の夜は出かけて映画を見ることはできた。今週末の人づきあいはたぶんそれでおわりだ。執筆がちょっと予定より遅れているからね。でもこれがぼくのやりたいことなんだから、犠牲を払うに値する。

以上がもの書きの人生の一幕。魅力的じゃないし、エキサイティングと言うには程遠い。でも楽しい。

次回は、ゲームの本を完成させるのに何をしなくちゃいけないかについてと、巨大なプロジェクトを何十もに小さく分割すればそんなにおっかなくなくなるということについて話そうと思う。それからどうして雑誌がアドベンチャーゲームデザイナー志望の人にいいかも議論するつもりだ。


いいもの

または

どうして思いつかなかったんだろう?

このコラムの一部として、ぼくは自分の目にとまったイカした新製品をどんなものでも紹介したい。最悪のケースでは、ゲーム業界は、ぼくが自分でもできるような製品にお金を使わせてぼくを怒らせる。最良のケースでは、この業界はぼくがどんなゲームをプレイするかに関わらず欠かせない参考資料になるような本を出す。

斜面は急勾配なり! (The Hills Rise Wild!)
By ジェスパー・ミフォース& ジョン・タインズ(Jesper Myfors and John
Tynes)
出版元: ペーガン出版(Pagan Publishing) (www.tccorp.com)
戦略ボードゲーム

The Hills Rise Wild! をプレイした後、ぼくは正直な気持ち、この山岳地帯住民のミニチュア・コンバットの楽しみを知る前の自分の人生がどんなに空っぽだったか想像することもできない。これは2000年にぼくが買ったミニチュア/ボードゲームの中でやすやすと一番になる。しかもこの年はぼくがとうとうJuntaを手に入れた年で、決して競争がなかったわけじゃない。プレイは本質的にはミニチュアゲームの要領でやる。移動と武器の射程はインチで与えられていて、ゲーム盤の上には移動用のマス目はない。(「ゲーム盤」は実際には地形が印刷されたカード片でプレイヤーはゲームの前にそれを並べて毎回違う地勢をつくるんだ。)でもフィギュアを塗装するのに何時間も費やしたり軍隊に何千ドルもつぎ込んだりする代わりに、このゲームは必要な部品がすべてついてくる。4人までのプレイヤーはそれぞれ段ボール製の駒を6つ持ち、それぞれが山岳民の氏族のメンバーをあらわす。ゲームの目的は敵を散弾と魔法の神秘の打撃で穴だらけにしておきつつ、古いワッテリーの屋敷からネクロノミコンを手に入れ、自分の基地に持ち帰り、冒涜のエイリアンを選んで召喚すること。アクションは迅速で、楽しくて、荒々しい。ルールは自分の山岳民をどこに配置するかを慎重に考えさせるようになっていて戦略的思考をうながす。ゲームはすごく速く進行するし、慣性走行の感じが加わっている。ぼくはこのゲームを十分お薦めできる。

ヒーロー育成ガイドブック (Hero Builder痴 Guidebook)
By ライアン・ダンセイ、デイビッド・ヌーン&ジョン・D・ラテリフ
(Ryan Dancey, David Noon, and John D. Rateliff)
出版元:ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(Wizards of the Coast)
(www.wizards.com)
RPGサプリメント

正直に認めます−ぼくは表を使ってなにかをつくるのは全然だめなんです。ダンジョン、デーモン、都市、あるいはこの場合だったらキャラクターの背景。ヒーロー育成ガイドブックは結構な量の表がある。24の表はD&Dのキャラの背景を肉付けするために用意されている。この本のすごいところはこういう表がぎこちない髪の色や背丈のためのものじゃないこと。そういうものの代わりに、出身地方や家族などのキャラクターの性質に主眼を置いている。この2つの要素はD&Dのようなヒーロー系のゲームでは忘れられがちな部分だ。おとうちゃんおかあちゃんは近所の人に嫌われてたか? ほかの子供たちが妙な神に祈りを捧げていることでいじめてきたりしただろうか? そういうことのあれこれ、がここにある。加えてこの本にはD&Dのクラスと種族の可能な組み合わせ全てについて記述があり、典型的なタイプとその興味深い変種が説明されている。どんなD&Dプレイヤーにも、特にダンジョン・マスターに、強くお薦めする。DMの人はタイトルにだまされないように。これは細かく設定された興味深
いNPCをつくってキャンペーンに刺激を加えるのにうってつけの製品だ。

昔ある時に (Once Upon a Time)
By リチャード・ランバート、アンドリュー・リルストーン&ジェームス・ワリス
(Richard Lambert, Andrew Rilstone, and James Wallis)
発売元:アトラス・ゲームス社 (Atlas Games) (www.atlas-games.com)
カードゲーム

ぼくは2週間前にようやくこのゲームをプレイすることができた。そしてトリコになった。このゲームではプレイヤーは手持ちのカードに描かれている要素が含まれている物語を語ろうとする。もしもカードに「戦闘」とあって話の流れの中で向こうみず者どうしの決闘を描写することができたらそのカードを出せる。下で説明するエンディング・カードも含めて全部のカードを最初に出し切った人が勝ち。このゲームの仕掛けは、多くのカードが中断するようにできていること。もしもあなたがある要素に言及してそれが他のプレイヤーの中断カードにリストされている要素だったらそのプレイヤーはカードを出して物語のコントロールを奪取するだろう。エンディング・カードはさらにことをややこしくする。このカードは、「あがる」ために君が物語の終わりで使わなければいけない文章を一文含んでいる。このルールはプレイヤーがめいめいの物語をカードに合わせてねじまげようとするようになるためにすごく面白い言葉のアクロバットを発生させることになる。ゲームの楽しみの半分は、他のプレイヤーの番が来る度に物語が進んでいくこと。もう半分はみんなが注目している中で自分も同じことをやろうとすること。ゲーマーじゃない友達をまぜて遊ぶのにも絶対いい、すごくいいパーティーゲームだ。


謝辞:

翻訳にあたり、作者のマールズ氏に文意や一時期サイト上から消失した当コラムの行方をめぐり親切な教示を頂いた。記してここに感謝の意を表したい。なお訳文の非は全面的に訳者に責任があることは言うまでもない。


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*scoopsrpg.comまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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