翻訳: Thalion
問題
バーチャルリアリティが存在する世界設定では、ハッカーのキャラクタは大抵その狭い仮想空間へ閉じこもってしまいがちになる。ハッカー以外のキャラクタが「ナマ」の空間で走り回り、悪人どもとか GM が用意した素敵な手がかりとかを容赦なく吹っ飛ばしている間も、ハッカーはプログラムを書き換えたり、行く手を遮る AI を騙したりに明け暮れている。これはパーティが分割行動しているのと同じ。ハッカーとそれ以外のキャラクタを別々に管理して、その間を行ったり来たりしなきゃならない。ハッカーがクラッキングしているのが、他の PC たちがいる正にそのビルのセキュリティシステムであったとしても、やっぱりアクションシーンは分けて管理しなきゃならない。そして長々とナレーションが続くことになり、プレイヤーも GM もダレてしまうのがオチだ。
もちろん、こういう分割パーティの行動をうまく扱うためのワザは、GM がいつも持っているシルクハットの中にもいくつか転がっている。ただ、大抵こういうワザはメタゲーム的テクニックで、二つの異なったシーンの間をうまく繋いで、できるだけ違和感を感じさせないようにするためのものでしかない。だから、キャラクタたちが二つの違った環境(ここでは現実空間と仮想空間)に分かれている場合、大乱闘シーンや神経にくるようなサスペンスシーンでは、みんなが一緒にいるときのような同じ感覚を共有するのは至難の業だよね。
そんなわけで自信を持ってお送りするのがこれ。仮想空間と現実空間をまとめて扱って、より楽しく高度なプレイングをするための手法だよ。
解決法:グラスルーム・インターフェイス
大抵のセキュリティシステムは、重要な場所とそこを通る全てのものを監視しつづけるという単純な原理で動いている。「グラスルーム・インターフェイス」では、そういう監視装置(カメラ、スキャナー、振動センサ、などなど)からの入力を総合して、監視システムのユーザーが実際にそこに入っていけるような、原寸大サイズの正確なモデルを仮想空間上に作り出すことにする。インターフェイスの名前は、このシステムが仮想空間上の物体をレンダリングする際の方法にちなんでつけた。つまり、部屋の中身、壁、物体、そして人間すら半透明な姿で視覚化する。これによって、システムのユーザーは一切視界を遮られることなく、リアルタイムで部屋の中を動き回ることができるってわけ。
ちょっと待って。まだ続きがある。実物とは違った色で映像を作ったり、ポップアップのデータ表示を出すことで、普通の五感では得られないような情報をユーザーに与えることもできるんだ。システムが武器を感知した時に鮮やかな赤いオーラとして表示すれば、ユーザーは必ずそれに気付くはず。職員やビジターの頭上にはいつも ID やセキュリティ権限が表示されてる。ビル内の他のシステム(換気装置、防火装置、電気系統など)だって壁を透かして見られるし、何か障害が起きていないかもその色で区別できるんだ。
勿論、そんな風に色々なものを見ることが出来ても、行動を起こすことが出来なければ全くの無駄になってしまうから、数え切れないほどの対侵入者用装備がこのシステムには実装されている。例えば、仮想空間上には、現実空間に設置してある銃器と連動した、仮想的な「銃」があって、ユーザーは普通に銃を撃つようにして使うことができる。その銃を誰かに向けて撃つと、インターフェースがそれを解釈して、現実空間の銃器の弾道を決めて、全く違った角度から同じ的を射つようになっている。(あんまり演出過剰で嫌だというのなら、音声認識にしてもいいと思う)
リモートコントロールできるロボット(僕はミートパペットって呼んでるけど)があれば、これもインターフェイスと繋いでもいい。ユーザーはホログラム、ドローン、アンドロイドなど、予算の範囲でなら好きな姿で現実空間に出現することができるだろう。あるいは、パペットに武器を載せたり、ユーザーの格闘スキルと組み合わせるなどして、こうしたものを攻撃用に使ってもいい。ただ、大抵の場合は単に見せかけ上の PA システムとして使っている。「恐れ入りますがロープの超えないよう、お願いいたします。フラッシュはご遠慮願います」という声がどこからともなく聞こえるよりは、身長7フィートのホログラムから聞こえるほうが怖いに決まっているから。
シリアスな世界設定にこだわる人にとってのメリットは、キャラクタの視点から見た場合に良く分かる。ここまで高度に現実空間を真似た仮想インターフェイスが使えるのなら、このシステムを使うキャラクタが現実空間で用いているスキルを、そのまま仮想空間でも使うことができる筈。つまり、新しいスキルを習得したりする必要はない、ってこと。習得済みのスキルなら、むしろ現実空間なんかよりも楽に使えるだろう。これはつまり、職員に仮想空間技能とセキュリティ技能の両方の訓練を施す必要はない、ということで…コストも節約できるって訳。(そう、コストだよ。どんな世界でもこの話をすれば正当化できるし)
GM にとってのメリットはと言うと、ハッカーがセキュリティを押さえようとするときにも、パーティを分割行動させる必要がなくなるってことだ。これは透明なキャラクタがその場にいるのと似ている: ハッカーはグラスルーム・インターフェイスを通して全てのキャラクタ(と全ての物体)を見ることができるし、事前に準備さえしておけば、現実空間のキャラクタたちと意思を疎通させることもできる。でも、現実空間のキャラクタからハッカーは見えない。インターフェイスの性能次第では、ハッカーのプレイヤーにはより細かいディティールを伝えることになるかも知れないが、すでに説明の済んでいる場面に多少のディティールを追加する方が、全く別の場面を最初から説明するよりははるかに簡単!ってわけだ。
一方、グラスルーム・インターフェイスを使っている者ならば、このハッカーを見ることができる。それはシステムにジャックインしているセキュリティ要員でもいいし、グラスルーム内にだけ存在するセキュリティ AI でもいい。相手がこのどちらの場合でも、ハッカーはこうした相手から身を隠さなければならない。同じインターフェイス内で働いている誰かに見せかけたり、あるいは何かこうハッカーっぽい離れ業でそれを実現させてもいい。失敗すれば、見つかり次第黒コゲにされることになる。このように、ハッカーのキャラクタは他の PC と同じ場面にいながらにして、これまでやってきた普通のハッキングを楽しむことができるわけだ。仮想空間と現実空間のイイとこどり。
一粒で二度美味しい、ってとこだね。
LARPについてのメモ
グラスルームの原則を使えば、ライブアクションでのハッキングも簡単にすることができる。壁や登場人物を透明にすることは出来ないのは明らかだけれども、それはあまり大したデメリットにはならない。その一方で、ハッカーのために別の環境を作ってやる必要がないというメリットがある。ハッカーの仮想空間上にある部屋は、他のプレイヤーがいる部屋と全く同じだ。そして同様に、ハッカーを透明人間のように扱えばいい。ハッカーには、他のプレイヤーが彼を無視しなければならないことを示すような何かを身に付けさせる。あるいは、現実空間のキャラクタが見ているのはハッカーの"ホログラム"であるとして、ゲームに溶け込ませてもよい。これによって、ハッカーは現実空間からの攻撃から守られ、またグラスルームのセキュリティシステムへのアクセス手段を持つことができる。だが、同時に彼は現実空間のキャラクタや物体に一切触ることが出来ない、ということも示している(ホログラムだからね)。そして最後に、セキュリティ関連のメタ情報(武器、IDコードなど)をシミュレートするための手段として、プレイヤー全員がカラーコード付きのタグを身に着けるようにする。そして、ハッカーのキャラクタだけにこのカラーコードを解読するための手がかりを渡しておけばいい訳だ。
次回予告: キャラクタをイモータルにするワザと…その後でうまく扱うテクについて、だよ!
All Worldz: A Game of Interdimensional Civilization by ImEG Games
L8r,
--Dan Pond