翻訳: Thalion<thalion*at*os.rim.or.jp>
新米の GM がキャンペーンを走らせている時に、よく出くわす問題がある。それは、様々なものの「薄っぺらさ」だ。この問題は、キャンペーン自体や、NPC たちの設定の中に表れるが、その兆候は、簡単に見分けることが出来る。登場人物や場所についての重要なディティールが、何の脈絡も無く、説得力もないまま、出現してしまっていないかどうか。つまり、キャラクタや舞台が持っている特徴について説明を求めても、ベニヤ板並みの薄っぺらさを露呈するような答えしか返ってこない、という状況だね。これは著しく没入感を損ねてしまう。
これに関連して、厚みの付け過ぎても問題になる。例えば、時間の配分だ。君のキャラクタが、通りすがりにぶらりと入った靴屋があったとする。その店主について、微に入り細を穿った描写をしたところで、何の意味があるだろうか?。もう二度と会う事もないのに。それならば、PC が憎んで止まない敵役の描写に時間を掛けた方が、よっぽどいい。
ディティールを付け過ぎることの弊害は、実はもっと別な、分かり難い所にも隠れている。君がある NPC のディティールを描写し終えたとする。君はその後、その NPC を利用する気でいる。だが、プレイヤーたちは、君が考えているようには、そのディティール豊かな NPC を扱ってくれないだろう。彼らは、NPC をエキストラとして絡んでいったりしない。むしろ、そのディティールのあちこちを気にするあまり、話を先に進めようとしなくなるかも知れない。これはプレイヤーにフラストレーションを与えることになり、キャンペーンに悪い影響を与えることになるだろう。
ラッキーな事に、この問題には、簡単な解決策がある。これをY3 (Yの3乗法) と呼ぶ事にしよう。1 この方法は、驚くほど簡単な上に、必要なだけの厚みを与えてくれる。手短に言おう。全ての重要なキャラクタや、文化、舞台背景などの特徴について、「なぜそうなの?」という質問を三回立て続けに行うことだ。
例を挙げよう。ある粗野で悪者の NPC がいるとする。粗野な悪者、というのは、キャラクタ的には重要な"特徴"だ。そこで、質問をしてみる。
ブロヂンズ君、どうしてそんなに粗野なの?
しばらく考えて、君はこう答える。
ブロヂンズが粗野なのは、周りから一目置かれるための方法を、それしか知らないからだ。
この答えを受けて、更に次の質問をする。
ブロヂンズが、周りの人たちに恐怖を与え、そこから生まれる敬意を欲しがるのは何故なんだろう?
(同じくらい有意な質問としては、粗野だとどうして一目置かれると思うのか、というものが考えられるけどね)この質問について考え、こういう答えが浮かんできた。
ブロヂンズは昔、いじめられっ子だった。彼が刃向かうまで、それは続いた。
そしてこれは、第三の質問へと繋がっていく。
なぜ周りの子供たちは、彼をいじめたのか?
答え:
彼は 1950 年代、アメリカ南部で、異なる人種の間の結婚の結果として生まれた子供だった。時代、場所とも、混血児にとっては厳しかったのだ。
このように、「何故?」という問いかけと、それに対する答えを三回繰り返すことで、NPC に深みを与えることが出来た。そうでなければ、薄っぺらなステレオタイプとなっていただろう(現在の彼は、厚みのあるステレオタイプだが)。たった一つ、「粗野な悪者」という事だけから始めたのだが、最終的には、その事以外にも、たくさんのことを知るようになった筈だ。つまり:
これらの事から、幾つかの推論をする事が出来る:
この方法で、三分も掛からない内に、物凄くたくさんのアイディアを生み出すことが出来た。
上のやり方において、強調しておかなければならないキーワードがある。それは「重要な」だ。この手法は、あくまで「重要な」キャラクタ、文化、舞台などの特徴に対してのみ、使うべきであり、それ以外のものに使ってはならない。では、何が重要であるかをどうやって判断したらいいだろうか? 実は、プレイヤーが君を導いてくれる。
キャンペーンに出てくる NPC や場所の内、キャンペーン上どうしても重要になるものというのは、君には予め分かっている筈だ。それらを判別するのは簡単だから、それらについては、あらかじめ Y3をしておけば良い。それ以外に、プレイしている内に分かってくるものもあるかも知れない。どんな情報に対して、プレイヤーたちが食いつき、興味を掻き立てられるのか。それを予め予測するのは、まず不可能だ。これは普段からよく起きる問題の一つだ。だが、君にとってはもう「よくある問題」ですらない。君にはY3という強い味方がついているのだから。
Y3はとても使い勝手が良いので、即興でやってしまうことも出来る。まだあまり設定を決めていなかったマイナーな PC に対して、プレイヤーたちが深く突っ込み始めたら、ちょっとの間だけ連中の気を逸らしておいて(ポテトチップスなんか効果的)、素早くY3のセットを、要らない紙の端っこなんかに書き留めておく。ほら、インスタントな深みのある NPC の出来上がり。ハムネット村の住人たちが、ある特定の通りを横切るとき、必ず帽子を脱ぐ。その理由をプレイヤーたちが詮索しはじめたら、天井の一点を指差して「見ろ!亀の足跡があんなところに!!」と叫び、心のなかで素早くY3だ。連中が気づくころには、君はもうどんな質問にでも答えられる。(連中が気づくまでにはしばらくかかる。プレイヤーというものは、いとも簡単に、長い間気を散らしてくれるものだから)
さあ、今まで見た事もないような、深みを持ったゲームをやってみよう。Y3の助けさえあれば、君の設定に潜在的な穴があっても、何も恐れることはない。自信を持とう!
1僕がこの名前のついたルールを最初に見つけたのは、Dream Pod 9 の GM 用のサプリだった。実は、このルールについては、ライター向けにもっと色々と細かく書いてあるものを見た事がある。だから、Pod の本から持ってきてもそれほど心は痛まないという訳。
マイケル T. リヒター(Michael T. Richter)
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