翻訳: Thalion<thalion*at*os.rim.or.jp>
Star Trek: The Next Generation シリーズの "Symbiosis"の回を覚えているだろうか? 覚えてないだろうな。"Symbiosis"は、あのシリーズの中でもかなり出来の悪い方に属するからね。その原因の一つは、テーマに関係している。"Symbiosis"のテーマは陳腐で、その扱いも酷いものだったからだ。
君も、自分のシナリオが"Symbiosis"みたいにしたくはないと思うだろう。何がしかのテーマを自分のシナリオに組込んだ場合、笑いのネタになるよりも、うまくかみ合って欲しい筈だ。さて、どうやったらそれが出来るだろうか?
テーマとは何であるかを知っているだけでも、その役に立つ。短く言えば、テーマとは、「〜についての話」と言うときの「〜」の部分だ。"Symbiosis"を例に取れば、薬物中毒と取引き、ということになる。テーマはプロットの各要素を引っかけるためのフレームワークなのだ。テーマは、「薬物の売人は悪者だ」という具合に、シンプルにしてしまう事も出来る。また、「科学は、神の持てる秘密を暴き立てようとする過程で、不遜にも神そのものを殺してしまった」というように、複雑なものにも出来る。1
テーマがないと、その作品はごちゃごちゃとして、読者を混乱させ、究極的には誰も満足させる事が出来ないものになってしまう。正しいテーマを選べば、フィクションにも強い拘束力が生まれる。これはロールプレイングゲームにも当てはめることが出来る。
テーマのないシナリオは、支離滅裂なアクションが続くばかりで、はっきりとした結びにもたどり着けない。テーマがあれば、ロールプレイングゲームは、「単なる」ゲームよりも、はるか上の存在になる事が出来る。インタラクティブな文学の最高峰と、肩を並べようとすることすら可能だ。
殆どのロールプレイングゲームには、GM のコツというものがある。その多くは、テーマについて触れている。しかし、触れるには触れるのだが、ゲームの中にそのテーマを取り込んでいく実践的な方法については、真に与えられているとは言えない。これは、ロールプレイングゲームは文学ではない、という事から生まれている問題だ。作家達作品の中で起きる事柄を完全に支配している人々が使うテクニックは、GM にとって必ずしも常に有効だとは言えない。この問題についての実践的なアドバイスは、長い間行われていなかった。
テーマを自分のゲームに取り込もうとする場合、まず最初にやらなければならないのは、テーマを選ぶことだ。これは言うほど簡単なことではない。何せ君は物語の著者じゃないんだから。つまり、君が用意した状況下で、キャラクタがどう行動するかは、君がコントロールする事は出来ないんだ。キャラクタが君の期待どおりに反応してくれるかどうかは、君のプレイヤー次第。テーマがあったからと言って、プレイヤーたちがそうしてくれるような動機づけが出来るわけじゃない。でも、その逆は分かるだろう
君のプレイヤーたちが乗ってくれるようなテーマを選ぶにはどうするか。はっきりしているのは、とりあえず尋ねてみればよい、ということだ。自分のしたい事を伝えてみる。もしそれがウケるようなら、それで行けばいい。彼らは自ずとテーマをサポートするような行動を取ってくれるだろう。でも、いつもこのやり方が使えるという訳じゃない。
例えば、キャンペーンを考えてみる。そうだな、Fading Sunsがいいだろう。君がやりたいテーマは、信仰と自己犠牲だ。君は、PC たちが信仰を守るために死を選ぶか、生き残るために信仰を捨てるか、という選択を強いられるシーンをやりたいとする。でもこのテーマを教えてしまったら、自分の手の内を明かす事になってしまう。プレイヤーたちに心の準備をさせてしまうのだ。こうした状況下では、君は自分のプレイヤー達をよく知っている必要がある。彼らを(キャラクタを、ではない)動機づけているものは何かを、前もって知っておかなければならない。十分な知識があれば、プレイヤー達が君のテーマを受け入れてくれるかどうかを、知ることが出来るだろう。
テーマが決まれば、それをゲームに組込んでいく訳だ。物語の作者には、これを上手くこなすための様々な手練手管が用意されている。君が持っているのは、そのサブセットだけだ。繰り返しになるけれども、これは、ゲームの中で起きる事全てをコントロール出来ない、という理由によるものだ。物語の作者は、キャラクタの行動や態度を強制出来る立場にあるけれども、君に出来るのは、せいぜいプレイヤーをなだめすかし、頼んでみる程度のことだけだ。
テーマをゲームの中に組込むための方法として、物語作家的手法を使ってみる。これは明白な方法の一つだ。ただ、繰り返すけれども、君には PC をコントロールすることは出来ないし、彼らの行動がどういう結果になるかを予測する事も出来ない。しかし、君は、自分の NPC や、その行動をコントロール出来る。更に、状況設定も自分で行う事が出来る。
寛容の精神を中心的テーマとしたいなら? NPC に誰かを許させればよい。欲望が身を滅ぼす、というテーマを描きたい? 目先の欲望にとらわれた PC/NPC を出し、その行動によって、PC の大切な何かを壊すようにすればいい。
キャンペーンにテーマを取り込むための別な方法として、これはよく見落とされがちなんだけれども、象徴主義がある。これは、テーマを実際に言葉にすることなく、ゲームの中で表現することの出来る、優れた技巧の一つだ。例として、探偵もののキャンペーンを挙げてみる。話が進むにつれ、理性と狂気の境界というテーマが、狡猾な NPC や、不気味な芸術作品、奇妙な音楽、などの形で描かれていく。こうして醸し出される雰囲気2によって、君のテーマが巧みに語られていくのだ。
どんなやり方でテーマを表現するとしても、心に銘じておかねばならないことがある。それは、テーマがあるからと言って、プレイヤーの誰に対しても、何らかの行動を強要することは出来ない、ということだ。例えば、「欲望が破壊をもたらす」をテーマとして、Blue Planetのキャンペーンを立てようと思った。でも、そうしたからと言って、PC がいつもいつも強欲な NPC のお陰で酷い目に遭わされて良い、ということではないのだ。ロールプレイングゲームは、みんなで楽しむものだ。GM 一人のものではない。
もう一つ陥りがちな罠がある。それは「独演会」だ。"Symbiosis,"を例に取ると、これが失敗だった主な理由は、この話が物語ではなくて、レクチャーになっていたからなのだ。"show, don't tell"君のキャンペーンでは、この古いことわざを肝に銘じておくことだ。君がテーマについてのレクチャーを始めた瞬間から、プレイヤーたちは興味を失ってしまう。そして、君がセッションをよりエキサイティングにするために用意したテーマは、セッションを台無しにしてしまう。
だから、もし君がStar Trek: The Next Generationの"Symbiosis"を書いた連中の轍を踏んでしまったのなら、君のシナリオは、あの回の番組ぐらい酷くつまらないものになる。また、彼らが犯した過ちを避ける事が出来たとしても、君は、ロールプレイングゲームが持っている、媒体としての限界と、コミュニケーションによるゲームであるという特徴を十分承知して、キャンペーンに方向性と意味を持たせるための手助けとして、テーマを活用しなければならない。
1僕がこのテーマを拾ってきた出典を最初に当てた人に、バーチャルなクッキーをプレゼントする。
2良い雰囲気を醸し出すやり方については、将来このコラムで触れる予定
マイケル T リヒター(Michael T. Richter)
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