ジークジオン

デザイン/著者: 鈴木雅昭、中沢孝継、加藤伸朗
カテゴリー:RPGルールブック
発行:ツクダホビー
形態:ボックスタイプ
価格:4800円+税
ページ数:ルールブック56P、シナリオ冊子8P、ヘクスボード、駒多数
レビュー著者:宇津見(wfe0wyrm*at*mbn.or.jp)
プレイ経験:

 このゲームは、『機動戦士ガンダム』などの背景である、一年戦争時代の宇宙世紀世界を舞台にした、人型兵器モビルスーツ(以下MS)による宇宙空間戦闘を題材としたRPGです。
 しかし、このゲームは、1プレイヤーが一人のパイロットキャラクターと、MSを担当し、一人のGMが操作する敵側の部隊と戦闘をするという、実質的な戦術/戦闘級SLGです。ゲームの具体的な進行の指針もルールブックで説明されていますが、完全にMSによる任務遂行のみで、それ以外の要素は皆無で、せいぜい戦闘の合間にキャラクタープレイをするぐらいしかできません。ただ、「RPG」という表示がキャラクタープレイなどを行う心理的な裏付けになっています。
 こうした形式をRPGに含めて良いかどうかは意見が別れるでしょうし、はっきり言えばガンダムを題材とした多くのツクダ製ボードSLGに連なるものですが、少なくとも思い切って方針を明確にしたやりかたではあるでしょう。

 このゲームで扱っているのは、宇宙空間での戦闘ルールのみで、地球上での戦闘はサプリメントの『クロス・オブ・ジオン』、ニュータイプやより詳細な個人行動用ルールなどは『トワイライト・オブ・ジオン』で扱われています。ただし、これで扱われている宇宙戦のルールだけでもかなり詳細ですし、サプリメントの追加ルールもまた、より詳細なものになっています。

 収録されているモビルスーツなどのメカニックは、発売が1990年ごろということで、『機動戦士ガンダム』に登場した宇宙空間で使用可能かつ、ニュータイプ専用機を除いた機体と、一部のMSV、『機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争』の序盤に登場したモビルスーツのみです。後のサプリメントでは、『機動戦士ガンダム』の地上用、水中用、ニュータイプ用機体や、『0080』の中盤以降の機体が追加されています。

●キャラクター

 戦闘中の攻撃等の判定は、2D6で、モビルスーツの性能+技能レベル以下を出すことで、プレイヤーキャラの能力値そのものは関わりません。
 技能は<確認><行動向上><武器><狙い撃ち>などMS戦闘に関わるものや、<ライフル><ピストル><通信><オペレーター>などそれ以外の技能です。ただし、MS戦闘と、生身での戦闘に使う技能以外は、ほとんど使いでがありません。また、MS戦闘関連の技能も<ザク行動向上><グフ行動向上><ドム行動向上><ザクマシンガン><ゲルググ用ビームライフル>など専門化して一つ一つ覚える必要があるという、かなり制限が厳しいものです(いちおう、似た対象ならレベルを下げて技能を使えるとはなっていますが)。

 能力値は、<体力><敏捷性><運><士気><カリスマ>で、実際にプレイで使ってみると<カリスマ>以外はほとんど、MS戦闘での無駄がありません。
 能力値が関わるのは、MSが大きなダメージを受けた際に失神するかどうかの<士気>による判定、脱出時の<敏捷性>による判定と<体力>へのダメージ、そして<運>によるダイスの振り直し。しかし<運>によるダイスの振り直しは非常に厳しく、使える回数が少なく、振り直す前より悪い目が出ても適用され、結果として「無いよりマシか、下手をすればさらに墓穴を掘る」という非常にスリリングなものになっています。
 ただ、脱出成功率だけは案外高いです。

 なお、キャラクターメイキングは、能力値、所持技能から、スタート時点のレベル(新兵、熟練兵など)まで、全てダイスで決められるようになっていて、正直言って発売された当時でさえ時代遅れという気がします。

 また、アムロやシャアのような、ヒロイックな活躍をするキャラクターの再現性も、かなり低いです。

●戦闘

 モビルスーツの各種パラメーターはかなり詳細です。
 命中判定は部位ごと、それも、手足とかだけではなく、エアインティークやカメラアイという細かい部位まであります。
 武器の弾薬数もこまめに消費され、故障判定もありますし、武器や装備を持つたびに重量も増加します。
 さらには、移動するごとに推進剤を消費する必要があり、推進剤が無くなれば宇宙空間で立ち往生する事になります。ただし慣性などは再現していません。
 他にも、命中判定時には寸法修正、回避レベルによる修正、攻撃位置などがかかわってきます。<両手射撃><散布射撃><照準>など、命中率などを上げたりする行動も、豊富にあります。

 実際の戦闘手順では、行動ポイントを消費して(後述)移動、攻撃、索敵、防御行動などを進めていきます。
 そして攻撃時には、攻撃側のみが命中判定を行い、防御側にできるのは事前に回避行動をとるなどして相手の判定に不利な修正を付けるのみです。ただし、楯があるなら、それによる防御判定を行う事ができます。命中すれば、命中部位や誘爆判定などを行います。
 一発命中するごとのダメージは大きく、一撃でザクの腕が吹き飛ばされて、そのまま全体も誘爆で大破という事も珍しくない、緊迫した戦闘になります。

●重量と行動ポイント

 このゲームを面白くしているのは、重量と行動ポイントのルールです。

 ターンの始めにすべての行動計画を申請する必要はありませんが、移動、索敵、攻撃、回避姿勢などを1行動とるたびに、行動ポイントを消費します。行動ポイントの範囲内で、いかに有効な行動の組み合わせをするかが要となります。消費したポイントは次のターンには回復します。
 多くの行動ポイントを持つ方法はいくつかあります。最も単純な方法は、行動ポイントの多い機体(概ね、高性能なMSということになります)を使う事です。とはいえ、一回の兵士であるプレイヤーキャラに損兄幅広い機体選択ができるわけはありませんので、どちらかといえば、他のRPGでいうところの「報酬」になることが多いです。

 もう一つの方法は、キャラクターの<行動向上>技能のレベルを上げる事です。

 最後に、セッション中に頻繁に調整可能なのが「装備」です。
 武器や増設パーツが少なければ行動ポイントは多いですし、重装備であれば行動ポイントは少なくなります。しかし、重くても強力な武器は欲しいですし、予備弾装も必要、戦闘中の武器の故障にそなえた予備の武器も必要です。こうしたことを考えて、装備を選択する事になります。
 また、戦闘中には、武器を捨てて身を軽くするということも起こります。こうしたことが、戦闘を面白くします。

 なお、重量は当然の事ながら、移動速度にもかかわります。

●内容物

 今時のTRPGではなかなか見られないような、しっかりした作りのヘクスボードと、駒が多数、そしてカード式のMSのデータシートが同梱されています。
 シナリオも付属していて、一編は短編ゲームブック形式です。もう一編は、地球圏を移動しつつ、ソロモン、ア・バオア・クー攻撃のために出撃した連邦艦隊を索敵し、攻撃するというものです。

●まとめ....の前に

 このゲームは確かにモビルスーツ戦闘に特化した作りではありますが、その再現性や、プレイの興奮度は高く、今ではあまり見られないようなしっかりしたヘクスボードや駒などが快適なプレイの裏付けになります。ガンダム世界のモビルスーツ戦闘を楽しみたいならお薦めです....と、普段なら結論づけるところなのですが、このゲームが出た10年前ならとにかく、現在では胸を張って言えなくなっています。

 理由は、コンピュータゲーム、特に3Dアクションゲームの急激な発達です。

 なぜガンダムを題材にしたゲームがプレイされるかといえば、その大きな理由は、「MSの操縦と戦闘を疑似体験したい」という欲求によるものでしょう。ツクダなどから数多くのボードSLGが発売され、TRPGも他の題材のものに比べて、メカニックや戦闘を非常に重視したものが多いのが、その証明でしょう。

 『ジークジオン』が発売された1990年当時や、それ以前のツクダ製SLGの全盛期のころには、コンピュータゲームのリアリティはお粗末な物でした。それゆえに、ボードSLGやTRPGは「再現性が高く楽しい」と主張する事ができました。
 しかし1995年の『バーチャロン』の発売を皮切りに、『ガングリフォン』『アーマードコア』といった、十分なリアリティと優れたゲーム性を持ち、強い興奮をもたらす、巨大ロボットの操縦と戦闘を題材とした3Dアクションゲームが次々と製作、発表されました。
 直接ガンダムやMSの操縦と戦闘を題材としたゲームでも、プレイステーション発売初期の『機動戦士ガンダム』こそ評価は芳しいものではありませんでしたが、『バーチャロン』以降に発売された『機動戦士ガンダム外伝』三部作は高い人気と評価を得ました。そして、ドリームキャスト用のゲーム『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で』では、さらにリアリティを増した3Dグラフィックに加え、装備や機体の選択、小隊を指揮してフォーメーション攻撃を行う事すら可能になっています。
事実、私もこれらのゲームに熱中しました。

 さらに、私が値下がりを待たずにプレイステーション2の購入を決めた理由も、『ガングリフォン』や『アーマードコア』の新作が発売されると確定した事によります。
 そして、『メックウォーリア』のファンの方には申し訳ないのですが、私のプレイした『メックウォーリア』といえばPCゲームで、正直あれをやると、未プレイながらボードSLGの『メックウォーリア』をあえてやる気が起きないんです。

 今や、コンピュータゲームは、10年以上前のガンダムファンの、「MSの操縦を疑似体験したい」という夢を、ボードSLGやTRPGを踏み台にして(注:ガンダムに踏み台にされてジェットストリームアタックを破られたガイアを思い浮かべる事)、ずっと遠く通り越して、実現してしまったのです。
 昔からボードSLGやTRPGを続けていた人ならプレイするでしょうが、そうでない人がプレイするかどうかは、批評に疑問です。

 「だって『バーチャロン』の方が面白いもの」

 ボードSLGやTRPGには、もはや存在意義はないのでしょうか?
 戦場の設定や、敵味方の配置などが自由にできるというメリットはあります。しかし、コンピュータゲームがその気になれば、こうした機能は簡単に実現できますし、事実『アーマードコア』シリーズにはそうした要素が導入されています。
 ロールプレイやキャラクタープレイが楽しいという意見もあるかもしれませんが、美しいグラフィックと声優の演技によるコンピュータゲームの幕間劇、あるいは戦闘中に挿入される台詞に比べ、素人演技がどれほどのものでしょうか?

 では、ボードSLGやTRPGに存在意義が無いかといえば....いいえ、生身の人間立ちによって運営される「ライブ性」にこそ独自の楽しさと存在意義があるのでしょう。
 しかし、ライブ性といってロールプレイやキャラクタープレイに熱中するだけでは駄目です。もっと他の要素、例えばボード、立体物、その他の視覚的補助、プレイに使用する各種ツールなど、視覚的に楽しめたり、手で動かしたりできる小道具が必要です。ルールの工夫も、ただ単に戦闘を処理する以外にも注意を向ける必要があるでしょう。
 現在発売中の『ガンダム戦記』では、一応プラモデルなどの立体物を使ってプレイするルール(というより示唆)もありますが、完全にユーザーに依存しています。ヘクスマップや駒も、カラー印刷のものが付いていて、おそらく現状では最大限の努力をしたのですし、デザイナーや編集者の方々には感謝もしていますが、それでも昔のボードSLGや『ジークジオン』の内容物に比べれば、チープです。現状のガンダム系TRPGや、TRPGそのものが(特に、富士見のマギウスシリーズは、チープな文庫形式に二級、三級のイラストレーターで、完全に、人気アニメや漫画、小説の、関連商品を安いコストで出す手段と化していました)、こうした面で昔より退行しているといえます。

 こうしたライブ性を上手くいかしたのが、トレーディングカードゲームでしょう。現在発売中の『ガンダム戦記』はTRPGの中でも、店頭ではかなりよい位置におかれており、売り上げもよいようです。しかし、ガンダムを題材としたTCG『ガンダムウォー』はもっとよい位置におかれており、売り上げもさらに良いようです。事実、モデラー仲間に聞いても、『ガンダムウォー』を買ってプレイしたという人は何人もいましたが、『ガンダム戦記』やホビージャパン製のガンダムRPGを買ってプレイしたという人はいませんでした。

 紙と鉛筆とサイコロだけでせこせこやっているだけでは、未来はないでしょう。
 スザクやゲーム・フィールドなどは、こうした問題意識を持ってか、内容物を充実させようという努力や成果が見られます。

 『ジークジオン』についてのまとめに戻れば、発売当時から数年間なら、はっきりとお薦めだと言えたのですが、10年の月日が経過した現在だと、非TRPGゲーマーや非ボードSLGゲーマーから見れば、煩雑なだけで魅力の乏しいゲームになってしまっています。いいゲームなのですが....。

 なお、点数評価が、情報量がずっと多いはずの『ガンダム戦記』より高くなっているのは、情報量は少なくても方針の絞り込みができている事を評価しての物です。 (2000年4月30日)

内容:4:粋でもうしぶんない
体裁:3(まあまあ)

値段評価:4800円/4800円


 この記事はScoops RPGを支える有志の手によって書かれたもので、あらゆる著作権は著者に属します。転載などの連絡は著者宛てにしてください。

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