著者:エリック・ジェームス・オルスロッド(Erik James Olsrud)
絵師: ジェニー・エイラ(Jenny Ala)
、タムラ・アンダーランド(Tamra Underland)
カテゴリ:汎用サプリメント
発行社:マジック&タクティクス・アンリミテッド(Magic and Tactics Unlimited)
形態:コピー誌
ページ数:24ページ
値段:6ドル
レビュー著者:kaitenyoku*at*www.fact-mail.com
プレイの有無:有
この回転翼、名付けにはこだわりがある。
高校時代に入れ込んだRPGに『蓬莱学園の冒険!』があるけど、「名は体を表す」という言葉通り、蓬莱学園は多国籍学校だったから「○○っぽさ」を出すためにもきちんとルーツのある名前が要るのだ。事実、ロシア人の名前に英米風の「名・姓」で名付けてしまい、恥かいた経験もある。背景世界がプレイ時にフル稼働しているゲームだと、こんなちょっとしたところでも疎かにできないし、こだわりを見せたくもなる。
今回紹介するのは、米国産の汎用名前リスト、『The Everyone Everywhere List, Third Edition』だ。長いので『誰でもどこでもリスト』と訳させてもらう。一応、D20システムと互換性があると明記しているが、特定のシステムに対応した作りにはなっていないので、どんなゲームにも使えるだろう。
この『誰でもどこでもリスト』は、ジャック・ホルコブ氏のレビューにある通り、35の国と民族の名前がD100乃至D20のチャートとして収められた厖大なリスト集である。比較的調査しやすい国になると、姓だけでD100のチャートが3つ4つある(300、400あるってことだ)。どんな名前があるか、ここでも改めて列挙しておこう。
・アフリカ各地(東部、西部、南部、中央部) ・アメリカ(18世紀) ・アラビア ・アッシリア ・英国(イングランドとスコットランドが混合) ・中国 ・クロアチア ・デンマーク ・オランダ ・古代エジプト ・ヴァイキング ・フランス ・ドイツ ・ギリシヤ ・ハンガリー ・インド ・インカ ・イラン ・アイルランド ・イタリア ・日本 ・ユダヤ ・韓国 ・ロンバルディア ・モンゴル ・ポーランド ・ポリネシア ・ポルトガル ・ルーマニア ・古代ローマ ・古代ギリシヤ ・ロシア ・スカンディナヴィア(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド) ・セルビア ・スペイン ・タイ ・トルコ ・ベトナム (リスト順)
名前にこだわる人は贅沢なもので、ジャックはネイティブ・アメリカンやイヌイット、アボリジニーの名前を要求している。僕も沖縄の姓が欲しいだの思うあたりは同類だ。それでも、姓名に関するRPGサプリメントとしてはこれ以上のものはないし、そもそも誰も作りたがらないというのが本音だろう。この本にしたって、僕はシアトルのゲームショップで偶然見つけたものだ。日本には10冊もないかもしれない。
装丁もジャックが指摘した通り、決していいものではない。厖大だが、ドゥーゼン教授じゃあるまいし、名前につかうアルファベットなど大した数じゃないので必然と細長いリストが紙面に川の字になる。また、35種類あるリストの中には情報量の多いのと少ないのがあるが、それらをすべてすし詰めにしているから、ジャックのように見忘れてしまうのもある。
楽に作れるアメリカ人、フランス人、日本人などはD100のチャートが3つ4つあるほど多量だが、アッシリアやインカなどは歴史上の人物の名前を20個ほど列挙しただけにとどまっている。まあ、インカ人が必要な背景世界などそうそうないから、それでいいのかもしれないけど。
日本人として見れば、やはりフランス人の名前は苦労する。読み方もそうだが、表記する側に立っても特殊文字の存在が厄介である。ちなみに、この本でも「フランソワ」が「Francis」となっている(赤字部分は特殊文字)。スペイン人、ドイツ人でも同じだ。
また、やはり漢字文化圏にいる者として、漢字表記は欲しいところ。そうなると、日本人の名前が肥大化するのはもちろん、「三国時代の中国は、新の王莽が『二名の禁』を出して名は一文字になったのが定着している時代だがら、単漢字の名がほしい」と思うマニアにも対応しなくてはならない(こらっ)。
いずれにせよ、このリストはNPCの名付けはもちろん、とっさの名付けにも最適のツールだ。現実世界のパラレルである背景世界はもちろん、最近では『ブレイド・オブ・アルカナ』や『アルシャード』でドイツ人姓名を用いており、名付けに対する意識は高まっているかもしれない。
ファンタジーばかりやっている人に顕著だが、名前にルーツを求めず、ただカタカナの響きの良さだけで名付けをしている人は多いと思う。経験から言えば、やはり「名は体を表す」のは真実らしく、ヒーロー願望が露出したカッコイイ乃至カワイイ響きのオンパレードになる。結局は、自分のヒーロー願望が投影されただけのキャラクターになりがちである。そもそも、そういう人は背景世界の設定に乏しいゲームを初心者用だと薦められ、(背景世界など無視した)ファンタジーっぽい名前をつければいいって教育を受けてきた可能性が高いのではないか。
いいかげんな話だ。
特に背景世界への疑似体験をメインとするゲームでは、キャラクターが単にプレイヤーの分身というだけでは困る場合がある。名前からして、背景世界の住人として溶け込まなければいい疑似体験はできないだろう。そういうTPOを学ばせるのも熟練者としての教育義務があるのではないか。本サプリメントはその第一歩となるだろう。
もちろん、偏執的なこだわりを見せるのも(ユダヤ人の名前なんてそうだ)プレイへの支障になる。こういう便利ツールを使って「それっぽい名前」を作る程度が丁度いいのかもしれない。
名前はキャラクターと背景世界をつなぐ設定として、もっとも分かりやすい要素だ。名前にもこだわってもらえないような背景世界は、それだけプレイヤーに思い入れをしてもらえない哀れな舞台となってしまうのではないか。
『誰でもどこでもリスト』が現在入手できる代物なのかは定かではないが、その意義は説明できたかと思う。
こういう「実際に使う」ことを前提とした便利ツールが多くあった方がよりよいシナリオを、そしてよりよい背景世界、よりよいRPGを作るには有益なのではないか。
内容:5(持ってて損なし)
体裁:3(僕もジャックも贅沢言ってんだし、これぐらいで)
値段評価:評価できません