著者:トロイ・クリステンセン,他
カテゴリ:RPGルールブック
発行社:大日本絵画
形態:ブック・タイプ
ページ数:150ページ
値段:3,000円(消費税3%込み)
ISBN:4-499-20523-9。
レビュー著者:森合亭(jmoriarty.teruyuki*at*nifty.ne.jp)
「ファンタズム・アドベンチャー」は,10年前,RPGブームの中で生まれた。以外に思うかもしれないが,これは海外で出版された製品の翻訳ではない。国産のRPGだったのだ。
出版当時(無論,現在でも),これほど異彩を放つRPGはなかった。その頃,日本で主流を占めていたファンタジーRPGは,中世的世界,剣と魔法,プレイヤー・キャラクターは人間あるいは亜人間(エルフ,ドワーフ,小人族,まれに,妖精)という共通性を持っていた。それ以外の知的クリーチャーはPCにとっての障害,あくまで倒すべき存在だった。「モンスター!モンスター!」(T&T),「ルーンクエスト」という例外はあったものの,オークやトロールといった連中をプレイヤーが自分のキャラクターとして扱うことなど,日本では考えもしなかったのだ。
「ファンタズム・アドベンチャー」は,これらとは全く異なる。このゲームシステムには79種もの知的種族がプレイヤーのために用意されている。そのほとんどが他のRPGではモンスターとして扱われるような連中だ。ほとんどは人間型かその変形だが,中には,スリッジ(アメーバ様生物)といった変わり種まである。ルール内には,種族間の深刻な対立に関する記載は全くない。つまり,70余りのクリーチャーは自由にパーティを組めるのだ。
他にも,「ファンタズム・アドベンチャー」では,興味深い試みがなされている。例えば,
・種族による感覚(視覚・聴覚・嗅覚)の違いをを能力値として表現し,市販シナリオに反映(シーンの説明に必ず感覚毎の描写がある)させる
・「冒険の目的」をキャラクター毎に設定(目的に沿った行動を行うと経験点が得られる)したり,出身「氏族」をキャラクターの特徴付けに利用す
ることでキャラクタープレイに対するルール面からの補助を図る
・術者(このRPGでは誰もが魔法を使える可能性がある)が呪文を唱える時のスタイルをルールで用意された分野から選択し,その組み合わ
せによって得られるマジックポイントや呪文行使に要する時間などを決定する
などと言ったものがあげられる。
背景世界もひと味違う。PCは,「モノカン」と呼ばれる惑星の住人となる。主な冒険の舞台となる大陸「アニス」は7つの国家と「ワイルドランド」とよばれる空白地帯によって分けられ,PCはいずれかの地で生まれたとされる。国家も,テクノロジーに傾倒し魔法を迫害する国家(なんとパワード・スーツまである!)や昆虫人達による国,魔法国家など個性的なものがそろっている。そして他のRPGにはいない独自のクリーチャー達・・・
「ファンタズム・アドベンチャー」には欠点も多い。
最大のものは,「世界設定」だろう。後で出されたサプリメントでフォローがなされているが,基本ルールブックにはあまり詳しい説明がない。設定されている国家にしても,他国との関係や国内事情に関する情報はない。詳しい説明がないことは,GMやシナリオ作成者の想像力が生かされる余地が十分にあることを示す一方で,セッションの準備の際に,彼らの負担が増加することをも示す。
キャラクターを特徴づける「氏族」も,実際の設定はGM/プレーヤーに一任されており,初めてこのRPGを遊ぶ者には少々扱いづらい。図表類(膨大な量がある)も,分かりやすくまとめられているとは言い難い。
ああ,一つ言い忘れた。筆者は,RPGで『感動的な』ストーリーを作りたいとか,『全くの他人』をシミュレートする『キャラクター・プレイ』をしたい人に「ファンタズム・アドベンチャー」を勧めるつもりはない。これはそう言ったことに向いたRPGではないのだ(タフィボーゼ(異星人の末裔で3本脚歩行で胴体の下に頭が付いている奴)とかスリッジ(アメーバ様生物)のメンタリティを,君は理解できる?)。
公式なサポートがない今,セッションを長く続けるには,GM/プレイヤーによるルールのフォローが必要だが,このRPGルールは少なくとも,ゲームとしての基本部分をしっかりと押さえている。10年たった今でも,現在流通しているRPGに比べて見劣りするものではないし,その発想は注目に値する。
内容:4(粋でもうしぶんない)
体裁:2(ださい)
値段評価:3,000円/3,000円