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Soapbox: About the Industry

リーダーシップとD&D (Leadership and D&D)

by サンディ・アンテューンス(Sandy Antunes)
October 16, 2001

翻訳:Thalion

以前に、起業者のためのキャラクタクラス について触れたことがあった。今日はもうちょっとだけ違った観点から見てみようと思う。さて、D&Dの5つのクラスの中で、最もリーダーに向いているのはどれだと思う? ここでいう五つというのは、ファイター、クレリック、メイジ、シーフ、モンクだ。それじゃあ始めよう。ただ、観ていく順番はこの通りじゃないんだけどね。

リーダーシップは明確な形を持たない。いくつかの要素については教えてもらったり、実践を通して学ぶことはできる。ただ、それ以外の要素 -- つまりカリスマ性や聡明さなど -- については、少なくとも D&D や僕たちの世界では、生来のものだ。良いリーダーとは、チームメンバーの個性からくるズレを調整し、彼らのモチベーションを高めて、各人の能力を十分に発揮させることによって、共通のゴールへ向けて進ませることのできる人を指すものだ。

別の観点から見てみると、リーダーは、労働者をきちんと統括し、最大の利益を求めようとする一方で、法的なリスクを最小限に抑えていくことが求められる。冷笑的な表現かも知れないが、この二つの役割のどちらが有意義かという点については、読者に決めてもらいたい。この分かれ道については、このエッセイの最後でまた触れるつもりだ。大どんでん返しが用意してあるんだけど、誰にも言っちゃだめだよ。

さて、D&Dのキャラクタクラスでは、どれが真のリーダーになれるだろうか? 端的に答えてしまえば「クレリックとシーフ」だ。既に読み飽きてしまっている人たちはここで読むのを止めてもいい。頭の良い人たちには、この例えがいかに正確に政治やビジネスの慣行に当てはまるかを知ってもらうつもりだから、チャンネルはそのままにしといて欲しい。

さて、まずはリーダーになれそうもないクラスからだ。ファイター -- 諦めたまえ。ファイターは労働階級だ。現場に出かけて汗を流したらそれで終わり。訓練の内容は戦闘に集中している。もし訓練をサボったりすれば、あっという間に餌食にされてしまうことになるから、自分の技術を高めることに専念する。彼らは実践的な経験を通して様々な技術(戦略や戦術)を学ぶけれども、逆に言えば、実戦で学習に失敗するということは、つまり死を意味するのだ。だから、リーダーとなるための基本条件を満たしつつ、さらにファイターでありつづけるのは、かなり難しい。

訓練という観点から言えば、メイジにも同じ問題がある。メイジの訓練 -- つまり学習だが -- には、極めて時間がかかるのだ。良いメイジとなるためには、座学や研究、その他の様々な学問的な事柄をこなさなければならない。これはつまり、彼らには世俗とに親しむ機会が少なく、同様に人付き合いの技術を学ぶチャンスも少ないことを意味するのだ。だからメイジは(以前の IT 技術者のように)誰かに使われる立場になる。

モンクには見込みがあるだろう。大まかに言って、彼らは様々な技術を学ぶし、彼らの目的は象牙の塔に閉じこもって知識を蓄えることではなく、現実世界の人々の間で生きていくことにあるのだから。また、彼らは世俗を超えた境地を学ぶので、より「大所高所」から物事を判断する助けにもなる。ただ残念なことに、彼らには重いイデオロギーの枷が掛けられている。みんながモンクをプレイしたがらないのは、モンクがみんな "Kung Fu" の Caine (*1) になってしまうからだろう。また、彼らには「世俗と関わりたがらない」という性質もある。

そういう訳で、モンクは潜在的に強いリーダーシップの素養がある。彼らが受ける特殊な訓練と社交技術から考えると、導師かコンサルタントとしてもやっていける筈だ。様々なシチュエーションを飛び回り、尊敬され、あちこちで引っ張りだこになる。素晴らしい人生だ。モンクは扇動家や CEO にはなれないが、CTO や外部コンサルタントとしてならうまく行くだろう。

次はシーフだ。PC のタイプとしてなら「ローグ」と呼んでもいい。さて、人を扱う技術、機械技術、隠密行動の力、目的達成志向のアプローチ、がシーフの特徴だ。シーフは他のクラスよりも、目的を決め、プランを立て、他の人々をうまく操って助力を得て、目的を達成することに長けている。ついでに言うと、シーフの仕事ぶりには定評がある。だから僕は、「明らかにシーフにはリーダーの素質がある」と思う。

シーフの他には、人を扱う技術(社会工学)を持っているクラスはひとつしかない。またシーフは、同時に二つのアプローチを学んでいる。つまり、人を避ける術(隠れる)と、人が何を言っているか聞き取る術(聞き耳)だ。また彼らは、人が見過ごすような瑣末事に気づくこともできるし、人に知られずに自分の欲しいものを手に入れる手段(すり)も持っている。荒事にも対応できる(特にバックスタブで)。シーフは「歩くスイスアーミーナイフ」と呼べるほど、様々な才能を持っている。そしてそうした能力は全て、野に出て 人と関わるためにデザインされているのだ。

リーダーとなるためには、人という要素が鍵になる。リーダーシップというのはまさにそれを扱うものだからだ。おっしゃる通り、ファイターは怪物を始末できる。メイジは魔法を知っているし、何かを作ったり殺したりもできるだろう。凄いね。でも彼らは特定の機能に偏り過ぎている。モンクは社会に溶け込むより自分の修行を優先する。「他人とうまくやっていく」という点では、シーフともう一つのクラスだけがそれを満足していることになる。

その「もう一つのクラス」とは? そう。お待たせしました。クレリックだ。彼らは魔法が使えるけれども、その能力を伸ばすのに勉強する必要がない。呪文の研究も要らない -- 過去の行いに応じて、神様がクールなパワーを授けてくれる。僕にとっては、これはサラリーマンの昇進システムみたいに見える。

また、クレリックにはそこそこの戦闘力もある。様々な逆境に飛び込み、そこで踏みとどまり耐えることができる。彼らはパーティでも浮いた存在ではなく、ゴールに向かって一緒に進むことができる。だから、最前線で命を危険に晒す意味も知っている。-- これは良いことだ。クレリックはファイターと荒っぽい話をすることもできるし、メイジと呪文の効果について議論することもできる。クレリックは様々に異なるクラスの間を繋ぐ役割を果たすことができるのだ。

一方、クレリックには「信仰」(あるいは「宗派」)というものがある。これは究極的な「大所高所」からの視点というものを提供してくれる。他のクラスは各個人がそれぞれのモチベーションに沿って行動しているが、クレリックは他のキャラクタに行動の根拠を与え、布教し、導くためにそこにいるのだ。彼らは生まれながらのリーダーであり、そうあることが彼らの本来の職務なのである。

役に立つスキルの組み合わせを持っていて、仕事熱心で、広い視野で判断でき、神様の後ろ盾があって、定期的にボーナスが貰える。また後ろ盾の中には、彼に「働け!働け!働け!」と連呼する集団もいる。信仰という背景があるため、全ての物事の道理や、敵味方の判断までしてくれる。また、人々に対してクエストやギアスを命じるための魔法まで持っている。そして教会さえ持つことが出来れば、現金収入という面から見ても、クレリックはシーフについていくこともできるのだ。

だから、D&Dのクラスを現代社会に当てはめるとするなら、こういう結論にまとめられるだろう。クレリックとシーフが上級マネジメント職だ。彼らは必要に応じてモンクにコンサルタントを頼んで、ファイターやメイジをうまく効果的に活用し、より大きな視野からの目的を達成しようとする(そしてその過程で沢山の現金を手に入れる!)。

僕は先に、リーダーシップについての二つのアプローチを挙げた。簡単に言うと、「チームの能力を最大化することを目指す」対「利益を最大化すること目指す」だ。おや。これはつまり、リーダーにクレリックとシーフのどちらを選ぶかってことじゃないか。これで分析モデルは完成だ。

さて、僕が何のためにこんなモデリングをしたのか、と疑問に思う人たちもいるだろう。そういう皆さんのために、僕は四つの回答を用意してある:

  1. RPG プレイヤーでいることを正当化したいかね? じゃあこう言えばいい「これはビジネス理論の勉強なんだ!」
  2. 「これは、初期の D&D におけるアーキタイプ的な特性を引用しながら、 これをメタファーとして利用し、まだ社会的に未成熟な読者層には理解の難しいテーマである『現代社会において成功し目的を達成していくための方法論』というコンセプトをを語るためのものである」
  3. 読者に媚びた答え:「これが理解できない人は、もともとリーダーシップの器じゃありません」
  4. ロールプレイングは、実際にゲームプレイヤーでない人たちにとっても、強力な道具になりうる。また、RPG を題材にして現実社会の仕組みを論じる方が、単に教科書を読むよりもよほど面白い。

生きて、学べ。


サンディ・アンテューンス (Sandy Antunes), sandy*at*rpg.net
*1 : Caine from "Kung Fu"
訳者もよく知らないのですが、調べたところでは、1970年代にアメリカで放映され、一大カンフーブームを巻き起こした TV 番組だそうです。Caine というのはその番組の主人公のようです。Amazon などを調べると、結構それに関連した書籍が出ています。日本人に分かり易く例えると、「映画『少林寺』のリー・リンチェイ(当時)」ぐらいが適当でしょうか?


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*scoopsrpg.comまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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