翻訳:Thalion <thalion*at*os.rim.or.jp>
ウェブには、いわゆる「早い者勝ち」のアドバンテージがあるとされている。 つまり、新しいニッチに手を付けた人が、そのニッチで支配的なブランドを作り上げ、後からそこに参入する人はそれを模倣する、というような事だ。僕は常々、RPG.net がこれに当てはまると考えていた。しかし、実際には、何か新しいものを作ろうとする時には、「一番乗り至上」という考え方は、実は邪魔になっているのだと考えるにいたった。さて、とりあえずは、僕の得意技、脱線方面から話を始めたいと思う。
ちょっと背景を説明しておいた方が、理解の役に立つだろう。 結局のところ、僕らが「早い者」だった。最初の独立系ゲーム向けウェブポータルサービスのね。その頃は「ポータル」という用語すら無かったものだから、僕らは「未確認中心資源(undefined central resource)」というフレーズを使っていたものだ。まぁ短い方がいいとは思ったけど、でも、僕らはまだそういう用語が指すような存在ですらなかった...いや、「ない」というべきかも知れない。ウェブポータルは、訪問者の数を出来るだけ増やそうとしている。でも、僕らが増やそうとしているのは、情報量だ。ここが大事な所だ。
僕らは、簡単に資料探しがしたかった。だから僕らは、内容と統計情報を重視した。つまり、僕らは、資料を探している人が、いつでもそれを見つけられるようにしたかった。これと比べて、ポータルは、視聴者を増やそうと躍起になっている。これは、情報と収入、どちらを基盤とするかの違いだ。最終的には、僕らはライブラリ的な手法を取る事にした。
僕らは、ネット上にある様々な情報は、やがて無くなってしまうかも知れない、ということを気にしていた。新しい技術であるウェブだけではなく、Usenet や ftp サイト、書庫ファイルなども失われるかも知れない。学生は卒業するだろうし、社会人は異動するだろう。そうなったら…ふぅ…彼らが持っていた資料は、幽霊のように無くなってしまうかも知れない。こうした問題は、インターネット自体が、殆ど技術オタクや学者ばかりのものだった頃にまで溯れるんだ、ということを思い出してみて欲しい。
市場は変わった。ウェブスペースは安価な、あるいは無料のものとなり、そこそこ変わらないものになった。ウェブアクセスは日常的なものとなって、それぞれのニッチについての沢山の「クイックスタートセット」が、常に花盛りの様相を示している。ベンチャー・キャピタルの国では、「早い者勝ち」という考え方は、未だに王位を譲っていない。
しかし、真の成功のための第一のルールは、今のトレンドを無視すること、だ。ウェブで公開されたものは全て、秘密の開発期間を通して作り上げられたものだ。だから、真似する側は、急いで追いつこうとする。そうなると、君は、主流となっているブランドと、自分の所との違いについて、あれこれ考えなきゃならなくなる。
だから、成功するための条件の一つは、先駆者になることだ。あるいは、少なくとも早期参入者となることだ。けれども、RPGnet が成功した理由が、単に最も早く市場に出たからではないのは、かなりはっきりしている。先駆者になるのは、とても便利なことだ。そのとおり。でも、この四年間、様々な競合相手が現れては消えていった。彼らが消えていったのは何故だ?
それは、RPGnet が、その頃は実現困難だった新しい物事を、創造し続けてきたからだ。これによって、成功というものが、賢さと忍耐という二点を備えているかどうか、という問題になった。そしてこの事が、「早い者勝ち」だけを目指してきたドットコム系のウェブ起業者を、完璧に叩きかえした。
僕らのライバルが消えていった理由は、ウェブスペースに掛かるコストが高かったこと、ゲームホビーに関するリンクや資料を集めるために時間が掛かりすぎたこと、そしてこの二つが、収入に直結していなかったこと、だ。シンプルな話だね。
今日では、皮肉なことに、大抵の起業者は皆、自分がどれだけユニークな存在であるかを一生懸命宣伝している。でも、自分という存在を定義するために、未だに他のサイトや、ビジネスモデルをパクっている。真の一匹狼は、本当に希になった。殆どハリウッドみたいだね。
初期の映画は、元々ユニークな経験だった。初のサイレント映画、初のコメディ映画、初のトーキー。上手く行くことを願いながら、そうしたものを作り上げてきたのだ。
そして、今日のハリウッドだ。続編やジャンルがある。誰かが「でっかい小惑星が地球にぶつかるぜ」な映画を作ってみたらヒットした。そうしたら、今度は別の二つのスタジオが、自家製バージョンを作った。「でっかい小惑星入りだよ!」って連中が叫ぶ。でも、成功しようと思ったら、もっとデカくてハデ な小惑星しかない。端的に言えば、もっと金を突っ込むしかない、ってことだ。
そして、先駆者は苦戦する。それは、今まで人の通らなかった領域を切り開かなければならないからだ。しかし彼らには、新しさと、創意工夫という武器がある。果たしてそれが、人々の求めるものであるかどうかは、ダイスロールの出番ということになるのだけれども。
「ああっ!」君は声を上げる(そして同僚を驚かす)かも知れない。「でもハリウッドの続編って、結構儲かってるじゃない! ジャンルものだってそうだし」でも、彼らはそれだけお金をつぎ込んでいる。そして、大抵、全く新しいアイデアによるものほどは儲からない。「フル・モンティ」は全く新しい、実験的な映画だった。でも、Caddyshack II (*1)はそうじゃない。
コストが鍵だ。空き地が多ければ多い程、新しいアイディアは出難くなる。そのニッチにおけるブランドが君のものだけだったら、差別化は簡単だ。見せかけに走ることも出来る。つまり、本来の目的には全く役立たない派手な飾りとか。先駆者であることのメリットの一つは、自分の主要なアイディアだけに集中出来ることだ。別に目立とうと努力する必要はないのだから。
しかし、もう一度言うが、「一番乗り」を目指すこと自体が、良い戦術だと言っている訳じゃない。どこにだって資金の豊富な奴っていうのは居るものだ。君がクレバーなアイディアを持っているとしても、それだけでは不十分だ。何か困難なことを選ばなければならない。
「フル・モンティ」が、無能な映画屋の寄せ集め連中が週末だけで撮ったような、即座にビデオ行き的な代物だったら、ハリウッドに完膚なきまでに踏み潰されていただろう。どこかの映画館一館で上映される前に、誰かが「俺のモンティはお前よりデカい」を製作して、二千の映画館で一気に上映されている筈だ。一番乗りが金持ちに敗れる、の図だ。
だが、「一番乗り」で、なおかつ「困難」なら、素晴らしい。君が取り組んでいる事が困難なものだったら、金にものを言わせた別人がやってしまう、という事は起こり得ない。連中は、君と同じ位クレバーで、思慮深くなければならない訳だ。でも、業界ではこの二つが揃う事は希だ。またハリウッドの話で恐縮だが、ジャンルがらみの量産品の事を考えてみよう。オリジナル作品の魂を真似ようとしているが、大抵はビデオ直行ということになる。これは、良い作品を作るのは、困難な仕事だからだ。
コンピュータ業界でも、似たようなものだ。 デル・コンピュータが成功したのは、機種数を減らし、製造までのオーバーヘッドを短くでき、かつ素早く出荷することが出来るような、カスタムオーダーのコンピューター販売方法を編み出したからだ。これは大変な労力だった。多くの企業は、まだそれが分かっていない。その代わり、無料の PC を配っているが、なぜ人々が未だにデルの機械を買うのか理解出来ずにいる。その答えは、勿論、その分野で真っ当な商売を続けるという事は、それだけで大変な事だからなのだ。
では RPG について観てみよう。D&D は先駆者だ。これが出版されたころ、自費出版はまだかなり難しかった。でも、自力で沢山の事をこなせば、何とかなった。また、彼らには新しいアイディアと、新しいニッチがあった。彼らは、サプリメントやモジュールをコンスタントに出版し続けることで、そうしたニーズを掘り出し、競合相手にすら「おお、凄いアイディアだ。僕らもファンタジーのゲームを作ろう!」とまで思わせるほどだった。
今では、コンピュータさえ持っていれば、誰だって最低限の労力で(勿論、昔と比べて、って事だけどね)自費出版が可能だ。商用、フリーウエアを問わず、市場には数百の RPG が存在する。そして「よし、金儲けするぞ。明日の D&D になるんだ!」と思っている起業家も、まだ沢山いる。
でも、そういう人たちには悪いけど、その「明日の D&D」は、全く別の代物になってしまった。Wizards of the Coast という小さな会社が、多大な努力のもとに作り上げた「トレーディングカードゲーム」だ。彼らは一生懸命働き、コストを下げるために沢山のアーティストと交渉を続け、その新しいアイディアを、ムカツクほど素早く市場に投入した。全く新しいアイディアという訳では無かったけれども、ユニークな側面を持っており、ゲームが上手く機能するために、多大な労力を掛けていた。
ああ、そして CCG は大人気となった。そして企業という企業がみんな「ああ、CCG を作ろう。これは次世代の MAGIC になるぞ!」と言い始めたというわけだ。....ううむ、ここまでくれば分かってもらえたかな?
つまり、先駆者となるだけでは駄目なんだ。まず先駆者でなければならなくて、更に、簡単には出し抜かれないような、それなりの困難さを伴う計画を選ばねばならない。そして、きっちりと仕事をしなければならない。
さて、ここまでの話から、RPGnet が発展していくためのヒントは得られるだろうか? そうだね、既に、僕らが作ったテリトリーを掘り始めているクローンサイトは沢山ある。これは避けようが無い事だ。敷居が下がってしまったのだから。安価なウェブスペースを手に入れたり、ちょこっとフォームを弄ったりすれば、誰でも簡単。中には、素晴らしいサイトデザインをするだけの余裕を持っているサイトとかもあって、僕らの尻に火を付けて、資金調達に走らせてくれるような所もある。これはもう、繰り返しなんだ。
ただ、その殆どは、十分な収入を得る事が出来ない。というか、彼らは、インターネットブームに乗って、ちょっとだけサイトを持っただけになると思う。差別化のための戦いが続くにつれ、必要なコストは増えていく。彼らは、競争のレベルが上がっていくと、それを維持するために必要な収益が得られないという事に気付き、やがて店を畳んでいくだろう。
これはまた、RPGnet にとっても、再び新しい領域を拓いていかねばならない、という事を意味している。新しい領域、つまり、他の人々が、その困難さ故にやろうとしないこと、だ。僕らは既に基本的な作業を終えた。でもそれは「まだ公表できない事」の部類なんだけどね。 防忘用メモ: 「新装開店」の模様替えをやらないのは何故か、と思っているのなら、それは僕らが、なにかとてもクールな事を準備するために、長い夜を過ごしてきた、ということなんだ。
そしてこの事、つまり僕が次にやろうとしていることは、もともと分類が難しいものになるということでもある。新しい分野。まだ誰もやっていないプロジェクト。新しい事を成すのは大変だ。
リスクは多い。でもそれは成功のための条件だ。 そして、幸いなことに、新しい地平に向かうのは、いつも楽しいことなんだ。
それじゃまた来月。
Sandy sandy*at*rpg.net
この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*scoopsrpg.comまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。