翻訳:Thalion <thalion*at*os.rim.or.jp>
僕らが John Wick(*1) の作品について、(覆面座談会形式のレビューで)ユーモラスな大騒ぎをしていた時の話だ。ある非常に重要な疑問が浮かび上がった。実際、どうして僕らはこんなことをしてるんだろう? 読者層を広げるためか? それとも単に面白いからか? インタビューに答えてくれた上に、コラムまで書いてくれた John Wick (彼の仕事には敬意を抱いているよ)にごちゃごちゃ意地悪を言うためか?
実際のところ、僕らが何かをするときの理由ってなんだろう? 僕らのビジネスモデルって何? 誰かが1万ドルとハムサンドをくれたら、僕らは喜んでオプラーの作品だけを読者に売るようになるのか(そしてスパム攻撃の的になるのか)? それとも、そんな大衆市場に迎合するくらいなら、敢えて宗教裁判を進んで受け、灼熱の鋼で身を焼かれる方を選ぶのか?
これは、ジャーナリズムの倫理の問題であり、編集者の良心の問題、そして、ビジネス倫理の問題だ。この分野はなかなかに難しい。金を稼ぐ事が、会社の必要十分条件なのか? それとも、夢を持つ事の方が大切か?
そういうわけで、そんなに前ではない昔、僕らは出版業と倫理に関する、一つの基本原則を考えてみる事にした。つまり、全てのビジネスが従うべきルールの書いてあるハンドブックみたいなものだね。
| 賢明なる出版者の道は一つしかない。ビジネスとして見た場合、大衆が欲するものを出版するのが、出版者の義務だ。よって、読者こそが第一のモチベーターだ。よく言われるように、売れるものこそがニュースなのだ。
この考え方を敷延して行けば、小さなスケールにおいての、編集者の意思決定基準を定めることが出来る。ネタを見せられた場合、考えるべき三つの原則は以下の通りだ:
つまりこの考え方は、ゴーカートにちょっと似ている。君たちの基本的なビジネスプランと、最初のアイディアがカート本体だ。最高のカートを作り上げ、坂の上から走り出す。君は好きな方向にハンドルを切る事が出来、自分のアイディアを自分の望む方向に走らせることが出来る。ただ、その大まかな進行方向は、道路自体によって制限されている。だから実際には、君が切れるハンドルには限界がある。人気のない道を選ばなければ、圧勝出来るだろう。時流に乗り続ければ、ベストタイムを記録することが出来る。 それでは、これをゲーム出版業界に当てはめてみよう。ゲーム出版者の仕事が、人々が欲しがるようなゲームを出す事であるのは明白だ。大衆が何を欲しているのかを理解し、それを生産するのだ。人々が RPG ではなくて、ファミリーゲームを欲しがっていると分かったら、ファミリーゲームを作るのが、その会社の義務だ。 ただ、これには別の方法もある。新しいアイディア...例えば、ロールプレイングとか...を市場で宣伝し、人々に気に入られるようにすることだ。この宣伝活動がうまく行ったなら、おめでとう!! 君は手付かずの市場を見つけた事になる。ただ、そうでなかったなら、戦略を考え直す必要がある。 端的に言ってしまえば、君たちは、市場の大部分のプレイヤーが欲しがるゲームを作りたいのだ。だから、その主要なゴールは、彼らが欲しがっているものが何なのかを知ることだ。そして、それを作ることだ。(あるいは、君たちがマーケティング活動を行うだけの余力を持っているなら、君たちが作っているものこそが、プレイヤー達の欲しているものなのだ、と連中に分からせてやる、という手もある) 商売が軌道に乗れば、市場の70%、80%、90%のシェアを持つことになるだろう。こうして大きな市場を掴む、ということは、つまり君たちは成功者であり、君たちのゲームが優れている、という事を意味している訳だ。100% のシェアをつかむ事は出来ないだろう。でも、市場の大多数を制するということは、一つの企業にとってはかなりのゴールだと言える。 そういう訳だから、君が持っているネタが、部数(サプリメントの数とか、ウェブアクセス数とかも)を稼げるのなら、これこそが君の編集者としての意思決定の基本になる。頑張れ!! |
真の出版者の道は唯一無二。今そこに在る最も優れた作品を出すのが、出版者としての義務だ。よって、君が選んだニッチの中で、最高の品質を実現するのが、君の主要なゴールとなる。君はそのニッチの読者に対し、出版するに足る良作だけを提供していくのだ。
この事によって、君の存在理由を反映した、編集者の意思決定基準を、より小さいスケールにおいて定めることが出来る。作品を提示された場合、考えるべき二つの原則は以下の通りだ:
これはちょっとだけ航海に似ている。君はボートに装備を載せ、好きなコースと方向を選ぶ。他のボートがかなりの速度で追いついてくるかも知れないし、全く別コースへ舵を切るかも知れない。でも、君が自分のコースを保ち続け、嵐を避けることさえ出来たなら、目的地には辿り着ける。よく考えて進む方向を選びたまえ。それ以外の事は重要じゃない。 それでは、これをゲーム出版業界のレベルに落とし込んでみよう。ゲーム出版者の仕事が、優れたゲームを出版することであるのは、明白だ。君は、君がターゲットとする市場を理解し、何が求められているかを知る必要がある。それだけではなく、君は更に彼らの思考の地平線を押し広げ、拡大して行かなければならない。こうする事によって、そのニッチは、その基本となる価値を保ったまま、常にフレッシュで、進化し続けるものにしておく事が出来る。 ただ、これには別の方法もある。市場で大騒ぎを呼ぶような作品を出しておき、「品質とは何か」といった概念について、決して独断的な立場を取らない、というやり方だ。ここでは柔軟性こそがその鍵となる。つまり、ハイブリッド作品や、新しい方向性を打ち出す事などだ。なぜなら、市場では、こうした事は常に良品であることが期待されるからだ。特にクロスオーバーは美味しいボーナスとなる。しかし、自分が持っている、出版者としての最初の目的を忘れてはならない。 端的に言ってしまえば、君は言うなれば、「お好きな方にはたまらない」ゲームを作りたいのだ。だから、君の主要なゴールは、読者を探す事、になる。 ここまでくれば、君が持ってるニッチ市場は、市場全体の 20% となり、それを維持して行くことも可能だろう。悪くないビジネスだ。よって、君のゴールは、君の好きなニッチ市場を探し、そこに君の全才能を注ぎ込むことだ。君が大衆市場を捕まえる事はまず無いだろう。でも、市場の一部に安定した区画を持っているということは、一つの企業のゴールとしては、価値のあるものだ。 そういう訳だから、もし君のしようとしていることが、それだけの価値があって、読者を捕まえておくことが出来るものならば、これこそが君の編集者としての意思決定の基本になる。頑張れ!! |
さて、真にして唯一の出版、あるいはゲーム出版ビジネスの道、という論争を整理することが出来て、嬉しく思う。ここらへんで僕の個人的な意見を入れてみようかと思う。ベンチャー(趣味、ビジネス、企業、のどれであっても)をやっていくのに一番大切なことは、夢を持つ事だ。
勿論、その夢が「埋もれるほど金を稼ぐこと」であってもいい。他の夢と同様、有意義なものだ。でもそれは唯一のものではない。人々がビジネスを始める理由も、そればかりではないんだ。全てのビジネスをお金に還元して考えるのは、あまりにも単純化し過ぎで、馬鹿げている。「市場」というものは、一つの哲学で括るには余りにも複雑だし、それゆえに沢山の手法や戦略が存在しうるのだ。
自分が欲しいものは何かを知り、どうやってそこに辿り着くかを理解し、そして実行せよ。旅を楽しんで。自分が実現したものを楽しんで欲しい。
グッドラック
Sandy
sandy*at*rpg.net
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